北極に行ってようやく分かった、地球に迫る”恐ろしい未来”

北極調査45日間に密着!
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大気中でも上昇を続けるメタン濃度

もう1つは、大気中のメタン濃度の測定です。担当は、大気化学の専門家、国立環境研究所の遠嶋康徳さんです。遠嶋さんは既に8年にわたって、大気中に含まれるメタン濃度の観測を行っています。

メタン濃度は、みらいが日本を出発してから北極圏に至るまで、連続して観測しています。ほぼ同じ季節に観測された2018年から2020年までのデータを合わせてみると、驚きの結果が見えてきました。

なんと2020年は、日本付近から北極圏まで常に過去の観測データより、高いメタン濃度を記録。しかも大気中のメタン濃度の上昇スピードが、加速している可能性が示されたのです。さらに、北極に向かうほど、メタン濃度が増していくという傾向も見られました。

大気中に含まれるメタン濃度のグラフ(国立環境研究所 遠嶋康徳さん提供)
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この結果は、一体何を意味しているのか。遠嶋さんは大きな危機感を抱いています。

「北極圏から出たメタンも1~2年すると地球全体に混ざってしまいます。そうすると、全球的にメタン濃度が上昇してしまう可能性があります。それがますます地球温暖化を加速させることになるのです。今なんとか温暖化を食い止めようと努力していることが、ますます困難になることが予想されるのです」

メタンは地球環境を激変させるパワーを持つ物質です。実際に、2億6千万年前、地球史上最大の生物大量絶滅が起こった原因は、メタンハイドレート崩壊をはじめとする、メタンの大気中への大量放出によって引き起こされた可能性が考えられているのです。

現在の地球で、メタンが増えることで、もう一度大量絶滅が引き起こされるかは誰にも分かりません。

しかし、現在、二酸化炭素の増加によって、劇的に温暖化が進んでいることは確か。それによって、“メタン大放出”というトリガーが引かれてしまうと、一体どうなってしまうのか。もう後戻りできない、深刻な事態が待ち受けているのは確かなようです。

今回取材した研究者は、皆さん、温暖化に対して懸念を口にしていました。私たちには激変する環境に抗うのではなく、その変化を見極め、乗り越える知恵が必要です。

その方策を探るため、最前線で奮闘している研究者たち。北極航海で得られた貴重な観測結果の解析が、今も急ピッチで行われています。そんな研究者たちを応援するためにも、私たち1人1人が、地球環境の変化を注視していく必要があると、北極で深く実感しました。

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