2020年、新型コロナウイルスが日本に上陸して感染が広がってきた時、私は「これから家賃滞納が増える」と直感的に思いました。そのため家主への警告という意味も含めて、「入居者とコミュニケーションをとって」と動画配信をしました。それが3月6日のことです。まさかその時期には、この先自殺者が増えるだろう、というところまで考えが及びませんでした。ところが緊急事態宣言中の5月2日。私は初めて管理会社の担当者から、入居者が自殺したという連絡を受けることになるのです。いつもなら旅行する人たちが多くなる、ゴールデンウイークの最中のことでした。

30歳で専業主婦から乳飲み子を抱えて離婚、シングルマザーとして6年にわたる極貧生活も送っていたという司法書士の太田垣章子さん。登記以外に家主側の訴訟代理人として延べ2500件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた。トラブル解決の際は常に現場へ足を運び、賃借人にも寄り添って解決しており、家主からだけでなく滞納者からも慕われる異色の司法書士だ。

そんな太田垣さんが不動産の新型コロナの影響をリアルに伝える本が『不動産大異変 「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ新書)である。自殺者が過去最大となった日本、賃借人の自殺も増加した。一体どうしたら悲しい自殺を減らす社会にできるのだろうか。本書より、ずっとお金に苦労してきた若い女性の自殺の背景について、抜粋にてお送りする。
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若い女性に自殺が増えた

管理会社の安藤剛さんは、とても慌てた口調でした。
「首吊りです、首吊り。どうしたらいいですか?」
声が少し震え、電話の向こう側で混乱している様子が見えるようでした。管理の仕事に就いて3年目の安藤さんにとって、入居者の自殺は初めての経験です。家族から「娘と連絡がとれない」と連絡を受け、駆けつけた両親と一緒に室内に立ち入ったところ、変わり果てた姿を見つけてしまったということでした。

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警察に通報した直後、どうしていいのかも分からず私に電話がありました。
これは困ったことになったな、それが私の第一印象です。この時にはまだ私も、この先延々と自殺が止まらないとまでは思ってもいませんでした。

なぜ困ったと思ったのでしょう。家主側の代理人として動いている私からすると、自殺をされてしまうと、家主側が受けるダメージがあまりに大きすぎるからです。

一つは、事故物件になってしまったことの損失。
もう一つは、解約手続きが難航するという問題です。