2021.04.21
# 中国

ドライバーが検問所で自殺…中国の底辺・トラック業界の過酷な現実

デジタル監視がもたらした不正の犠牲か
古畑 康雄 プロフィール

同様の罰金取り立て相次ぐ

金さんを死に追いやったもう1つの原因が、先に挙げた「北斗」システムのずさんな実情と地方政府による過酷な罰金取り立てだった。中国誌「財経」(4月12日)には、今回と同じ河北省唐山市の検問所で今年2月、金さんのように「未接続だった」として2000元の罰金を支払わされたドライバーの話が出ている。

「北斗」端末

「まったく信じられなかった。車載端末のライトは煌々とついているのに、北斗は昨年からオフライン状態だったというのだ」。

河北省の道路運輸条例により罰金を支払わされたドライバーは、「自ら勝手に衛星端末のスイッチを切った」と認めるよう文書に署名されられた。条例によれば罰則では2000元から5000元を支払うことになっていた。

だが法律の専門家は「財経」に、「罰金を徴収する前に、故意に未接続にしたかどうかを確認する必要がある。もし端末の原因ならば、ドライバーに再接続するよう求め、それを拒否したのなら罰金を科すべきだ」と指摘している。

同誌が入手したトラックドライバーに対する調査報告によると、99%のドライバーが「違法な料金徴収や罰金」の被害を受けていると回答。このうち35%が毎年1000~3000元、23%が3000~5000元の罰金を支払っており、かたや63%のドライバーの月収は5000~8000元だという。

北斗の端末は問題があるにもかかわらず、中国政府の方針で備え付けが強制されている。取り付けには3000元前後がかかるが、同誌によると、トラックを購入する際に、端末を取り付けないと運行許可が取れず、加えて毎年数百元の「サービス料」を支払わなければならない。この料金も各地の業者により600~1200元とまちまちだ。

北斗の端末は(ドライバーに道案内をする)ナビゲーションではなく、「ブラックボックス」だと同誌は書いている。運行中の記録は各省の交通プラットフォームに伝送され、さらに交通運輸省の指定する分析会社に送られるという。

 

2014年に交通運輸省は、旅客バス、危険物運搬車両、大型トラックなどに衛星測位端末の装着を義務付けた。その目的は運送データの収集に加え、速度超過への警告、さらにドライバーが過労運転をするのを防ぐため、4時間ごとに20分の休憩を取らせるためとしているが、現実には渋滞やサービスエリアが満車など、十分な休暇が取れないのが実態だという。

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