ドライバーが検問所で自殺…中国の底辺・トラック業界の過酷な現実

デジタル監視がもたらした不正の犠牲か

「死をもって訴えたい」

「多くのトラックドライバーの仲間のために言いたい、自分の死をもって、偉い人たちにこのことを重視してほしい」

4月5日、中国河北省唐山市の検問所で、金徳強という51歳のトラックドライバーが2000元(約3万3000円)の罰金を支払うよう命じられ、農薬をその場で飲んで自殺した。彼は死ぬ直前、トラックドライバーの仲間らに自分がなぜ死を選んだのかを訴えた文章を残していた。

金徳強氏のトラック 中国ウェッブ・サイトより
金徳強氏の遺書

この事件は中国の下層労働者の悲惨な実態や、地方政府による厳しい罰金の取り立てなど、多くの問題を社会に投げかけ、数日の間に何十という文章がネットに発表された。なぜこの一ドライバーの死が中国社会に大きな波紋を広げたのかを読み解いていくと、「世界第2の経済大国」の別の面が見えてくる。

河北省滄州市のトラックドライバーだった金徳強さんはこの日、唐山市豊潤区の過積載などの検査をする検問所で違法行為があったとして、車を差し押さえられ、罰金2000元を命じられた。

その違法行為とは、車載していた衛星測位システム「北斗」の端末が未接続の状態になっていたということだった。金さんは係官に事情を説明したものの聞き入れられず、「百草枯(パラコート)」と呼ばれる毒性の強い農薬をその場で飲み、自殺した。

なぜ「北斗」の端末が未接続になっていたことで罰金を命じられたのか。

この「北斗」は中国政府が米国のGPSに代わり独自開発した衛星測位システムで、トラックやバスにはこの端末を装着することが強制されていた。というのも、運行管理、特に長時間運転による過労を防止するため、一定時間運転後は休憩を取ることがドライバーに義務付けられていたが、それを守らない者に罰則を科すため、車の走行状態を逐一データとして当局が管理するシステムに送信、記録しているのだ。

 

だが肝心の端末に不良品が多く、「掉線(未接続、オフライン)」の状態になっていてもドライバーが気づかないというトラブルがしばしば起きていたのだが、当局は「長時間運転を隠すため、電源を切るなどして故意に未接続にした」として罰金を科すことが常態化しているという。

故意に切ったのではないという訴えが聞き入れられなかった金さんは、死ぬ前に次のような遺書を残した。

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