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日本人が知らない、温暖化対策の「キケンな最終手段」があった…!

“ジオエンジニアリング”とは何か?

地球温暖化対策をしなければ2100年に平均気温の上昇は約3.5度に達し、それ以降も気温が上昇し続ける。生態系は大きなダメージを受け、農業や人間の生活にも影響が及ぶ。なんとかして気温上昇を1.5度に抑えたい——これが2015年のパリ協定で定められた人類のゴールだ。

その手段に注目されているのが大気から直接大量のCO2を回収するなどの「CO2除去」や、太陽光が地表に到達するまでの反射(散乱)率を上げることで地球を冷やす「太陽放射改変」を代表とするジオエンジニアリング(気候工学)である。

CO2排出削減に加えて、これらの手段が検討されているのはなぜなのか。実現には何が懸念されているのか、企業や政府・自治体、個人は何をしたらいいのか——気候工学のガバナンスの専門家で『気候を操作する 温暖化対策の危険な「最終手段」』(KADOKAWA)を著した東京大学未来ビジョン研究センター准教授・杉山昌広氏に訊いた。

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「気候工学」が検討される理由

——SDGsのことは日本でもさかんに言われるようになりましたが、気候変動に対する危機感はまだまだ共有されていないように思います。改めてどんな定量目標が、なぜ設定されているのかについてから教えてください。

杉山 SDGsの気候変動に関する「ゴール13」は、あれ単体で見ると中身が後述する「適応」などに偏っているんですね。SDGsは同じ2015年にできたパリ協定と対になっていて、パリ協定では具体的に「産業革命前に比べて気温上昇を2度より十分に低い水準に留め、1.5度に抑える努力をする」という目標が設定されています。

それを元にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2018年に出した報告書によると、1.5度の目標を達成するには2050年頃までにCO2を正味排出量0にしなければなりません。

気候変動は人間の活動が原因で起きていますが、多くの科学者はこの問題は不確実性が大きい——今すでに起きている記録的な風水害や熱波に留まらず、どれほど甚大な影響を与えるかが未知数だと考えています。だからこそ「ここまでは起きないかもね」というくらいのことまで想定して対策を取るべきなのです。

そして1.5度に抑えるには最低でも「緩和」(排出削減)と「適応」が必要不可欠です。

CO2は他の大気汚染物質とは違います。たとえばPM2.5であれば工場を止め、クルマが走らなくなければ2週間くらいで大気がきれいになります。ところがCO2は排出量を減らしても1000年単位で大気中に存在し続けます。その間は気温が上がりっぱなしになる。

すでにもはや約1度平均気温が上昇してしまっていますから、排出削減に加えて、人類社会が気候変化に「適応」する、つまりたとえば防災面では堤防を高くする、農業では植える品種を変える、といったことが必要です。

そして「緩和」と「適応」でも1.5達成が難しいと考えられているために検討されている次の手段が「CO2を大気から取る」というCO2除去です。

なぜCO2の排出削減だけでは不十分かというと、ひとつには極めてCO2削減が難しいところがあり、もうひとつにはメタンをはじめほかの温室効果ガスもあり、それらの効果もキャンセルして気温を元に戻すためにはCO2をマイナスにすることが絶対に必要だからです。

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