彼女が深夜にスマホと向き合いはじめると、僕の給料日も目前だと気付く。彼女の原稿の締切がすっかり僕の生活リズムに組み込まれるようになった。
左手で包み込んだスマホを右人差し指でトントンと突っつく。
おもむろに風呂から出てきたと思えば、産まれたままの姿で1時間トントンするなんてこともざらである。
風邪をひかないか毎度心配になるが、彼女は全く風邪をひかない。
きっと恐ろしいくらいに免疫力が高い。
初めてふたりで会った日のこと
彼女と、初めての待ち合わせは、麻布十番の外国系オーガニックスーパーの前。
彼女は、名前のとおり植物柄がふんだんにあしらわれたワンピースに身を包み颯爽と現れた。
近くの九州料理店に入って早々、きれいに巻かれた横髪からパフスリーブに滴る汗がどうしても気になり、デリカシーの欠片もなく指摘してしまった。彼女は「初対面で中々そんなこと言わないよ」と嬉しそうに笑っていたが、今思うと申し訳ない。白ワインのチェイサーにウーロハイを嗜む彼女と飲む酒は各段に美味しかった。その後もアフガニスタン料理店や幡ヶ谷のスナックなどへ出向き真っ当に飲み友達になった(今こうして書いていて、スナックで入れたボトルを空けていないことを、思い出した)。
その後「ホムパ合コンをしたい」と彼女から連絡をもらったのは、開催予定の前日。彼女から出された人選条件は、盗聴器を仕掛けない人。1つだけだった。
スケジュールの空いていた、テクノロジーに明るくなさそうな友人数人と、初めて彼女の自宅へお邪魔した。
僕の友人にも優しい笑顔で、半ば強引にいやらしいゲームへの参加をすすめる彼女は何ともイキイキとしていた。誰にでも分け隔てなく飾らずに向き合うところ、初めて集団の中にいる彼女を見て、素敵だと思った。
そこに黒のパーカーに身を包み、黒いもふもふの飼い犬を連れ、登場したのが福田彩乃ちゃんだ。いかにも散歩のついで、といったなんともラフな登場だった。ほどなくして僕の友人のひとりが彩乃ちゃんに分かりやすくフォーリンラブ。今や彩乃ちゃんのパートナーである彼は、照れると鼻先を触る癖があるのだが、その日はもしや犬アレルギーか?と疑うほどに小刻みにこすっていた。
それからというもの頻繁に4人で会うことに。