4月16日公開の映画『約束の宇宙(そら)』は、学習障害をもつ幼い娘を抱えるシングルマザーの宇宙飛行士が主人公の斬新なヒューマンドラマだ。主人公を演じたのは、『007 カジノ・ロワイヤル』や『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』のエヴァ・グリーン。

過去の宇宙映画のなかで、女性飛行士の視点で訓練や宇宙へ飛び立つ心理を描いた作品はなかったように思う。本作の公開を記念し、主人公と同じく、母となってから宇宙へ飛んだ山崎直子氏へのインタビューが実現。女性宇宙飛行士であることから子育てまで、率直に語ってもらった。

山崎直子氏
山崎直子 プロフィール
千葉県出身。2010年にスペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)組立補給ミッションSTS-131に従事。2011年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)退職後、内閣府宇宙政策委員会委員、一般社団法人スペースポートジャパン代表理事、日本ロケット協会理事・「宙女」委員長、日本宇宙少年団(YAC)アドバイザー、宙ツーリズム推進協議会理事、環境問題解決のための「アースショット賞」評議員などを務める。著書に『宇宙に行ったらこうだった!』(リピックブック社 2020年11月出版)、『宇宙飛行士になる勉強法』(中央公論新社)など。
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「子供が可哀想」と言われる女性宇宙飛行士

――映画ではエヴァ・グリーン演じるサラが宇宙飛行士に抜擢されたときに、マット・ディロン演じるベテラン宇宙飛行士に性差別的な言動をとられます。山崎さんが宇宙飛行士になられたのは20年ほど前ですが、当時、女性の宇宙飛行士は世間にどのように捉えられていたのでしょう?

『約束の宇宙』より

山崎氏:向井千秋さんが日本で初めての女性宇宙飛行士として選ばれたのが1985年で、そこから14年後に私が選ばれました。女性が選ばれるのが久しぶりだったので、珍しく思われていたかもしれません。

当時、「ママさん宇宙飛行士」と報道されることが多く、私はできればやめてほしいとお伝えしていました。「ママさん宇宙飛行士」という言葉には、なぜか“女性がひとりでお世話をしている”という響きがありませんか? 映画にもあるように現実は、宇宙飛行士よりも周りの人々のほうがもっと大変ですし、宇宙飛行のプロジェクトには膨大な数の人々が携わっていて、一つひとつの業務が真剣勝負。それなのに、“女性で母親”であるという理由で宇宙飛行士だけが注目を浴びることに大きな違和感を感じていました。

『約束の宇宙』より

――今でも日本では母親に対し「3歳児神話」があるほどですが、子供を置いて宇宙へ行かれることに対して非難を受けたことはありますか?

山崎氏:JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)やNASAの職員の間では、子供を残して出張に行く人もいたので励まされましたが、周囲からは「子供を置いていくなんて、子供が可哀想」と言われたことがある、という話をよく聞きました。

私もロシアへ単身で訓練しに行ったときは、「大丈夫なの?」と言われることがよくありました。でも、男性宇宙飛行士が同じことを言われることはないんじゃないでしょうか。私たちは知らず知らずのうちに、社会的風習に囚われているのかもしれません。