1995年、10歳のときにテレビアニメ版「エヴァンゲリオン」に出会い、エヴァと共に成長してきたという歌人の鈴掛真さん。シリーズの完結編となる映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:ll』が公開された今、約25年の歴史を振り返った前編に続き、「エヴァ現象」を解説する。

-AD-

エヴァが人々を魅了し続ける理由

アニメ作品が社会現象となる例は、決して珍しくありません。
『鬼滅の刃』の劇場版は相変わらずロングランが続いているし、2016年の『君の名は。』も記憶に新しい。新作が長きにわたって作り続けられているシリーズとしては、『機動戦士ガンダム』『ドラゴンボール』『セーラームーン』なども同様です。

そんな中でも、エヴァンゲリオンが特別視され、多くの人を魅了している理由は何なのか。

エヴァンゲリオンを観たことがない人でも、「主人公がロボット(?)に乗って戦う話」という大枠くらいはご存じと思います。
しかし、ロボットアニメとして見始めると、やがて「自分は今何を見せられているんだろう……」と戸惑うことになるでしょう。
エヴァンゲリオンは「主人公・碇シンジと父親・碇ゲンドウの成長の物語」と考えていただいた方が理解しやすいのではないかと思います。

ある日突然、父親である碇ゲンドウの命令で、人類を脅かす謎の敵「使徒」と戦うため「汎用ヒト型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオン」のパイロットになった14歳の少年・碇シンジ。
ロボットアニメの流れを組みつつも、エヴァンゲリオンは、殺伐とした人間関係に翻弄される思春期の少年や、父子の確執を描いたヒューマンドラマなのです。
その証拠に、テレビシリーズ序盤の第四話「雨、逃げ出した後」では、エヴァに乗って戦うシーンは無く、主人公が家出し、自身の在り方を自問自答する心理が丁寧に描かれました。

ファンは、自身の少年時代や、今でもどこか大人になりきれない自分を、臆病でいくじなしな主人公に重ね、共感する。
主人公を取り巻く個性的なキャラクターたちも、皆それぞれ複雑な事情を抱えており、人知れず苦悩する姿や、ふと語られる印象的な台詞に、視聴者はいつのまにか引き込まれてしまうのです。

2007年公開初日に集ったファンたち。キャラクターの扮装もみられた Photo by Getty Images