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あなたの選択の99.9%はアルゴリズムが決めている

『マスターアルゴリズム』(2)
いまや私たちの生活は機械学習なくして成り立たない。ネット検索、スパムメールの振り分け、本や音楽のリコメンドから、投資信託の銘柄選択、スーパーの商品陳列まで、それらの背後で動くアルゴリズムの存在など思い浮かべもしないほど自然に、私たちはその便利さを享受している。それにもかかわらず、機械学習研究の専門家たちが信頼に足るとする解説書はきわめて限られる。
このたび講談社が翻訳刊行する『マスターアルゴリズム 世界を再構築する「究極の機械学習」』は、機械学習の現状解説にとどまらず、機械学習の未来について長期的かつ包括的な見取り図を描き出したものとして、2015年の刊行当時から話題になっていた。すべてのアルゴリズムの重要な長所を統合した単一のアルゴリズム、つまり究極の機械学習である「マスターアルゴリズム」は可能なのか。それは人間の暮らしをどう変えるのか。この知的冒険の書から、いくつか抜粋してお届けしたい(翻訳者・神嶌敏弘氏による本書紹介はこちらです)。

なぜグーグルの時価総額はヤフーよりも大きい?

なぜGoogle社の企業価値がYahoo!社のそれよりずっと大きいのだろうか? どちらの企業もウェブページに広告を表示することで収益を挙げており、ともに業界の最大手である。どちらも広告を競売で販売しており、機械学習で利用者がどれくらい広告をクリックしやすいかを予測している。なお、この確率が高いほど、広告の価値は高まる。けれども、Googleの学習アルゴリズムは、Yahoo!のそれよりずっと優れている。これが、これらの企業の時価総額の差の唯一の理由ではもちろんないが、重大な理由の一つではある。

クリックすると予測したが、実際にはクリックされなかったら、広告主は機会を無駄にし、そのウェブサイト運営者は収入を得られない。これは、Google社の年間利益を500億ドルとして、クリック率の予測が1%向上するごとに、銀行預金が毎年5億ドル増えることを潜在的に意味している。よって、Google社が機械学習の大ファンになるのも、Yahoo!社や他社が追いつこうと必死になるのも何ら不思議ではない。

 

ウェブ広告での現象は、より大きな現象の一部が表出したにすぎない。どの市場においても、取引ができるようになる以前に、生産者と消費者に繫がりがなければならない。インターネット登場前の時代では、この繫がりの障害は物理的なものであった。書籍は近所の書店でのみ購入できて、この書店には限られた広さの売り場しかなかった。しかしながら、電子ブックリーダに、いつでもどんな書籍でもダウンロードできるようになると、今度は選べる書籍があまりにも多すぎることが問題になった。いったいどうやって、数万もの書籍が並ぶ書店の本棚を見て回ればよいだろうか?

これと同じことが他の情報商材、例えば、ビデオ、音楽、ニュース記事、メッセージ、ウェブページなどにも生じた。さらに同じことが、遠方で生産される商品やサービス、例えば、靴、花、ガジェット、宿泊先、教材、投資商品などにも生じた。この状況は、仕事や交際相手を探すときにさえあてはまる。どうやって互いを見つければよいだろうか? これはこの情報化時代に特有の問題であり、機械学習はその解決に大きな役割を果たしている。

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