約13年間のOL生活からフリーライターに転身、「どこでも働ける自由」を手に入れ、2020年からデンマーク・フィンランドを拠点に生活する小林香織さんの連載。

医療費が無料であり、不妊治療も無料で提供されているデンマークでは、2007年から既婚女性だけでなく独身女性にも同等の不妊治療が無料で提供されるようになった。それを機に、精子バンク等を利用して未婚で出産する女性が増え始め、国内では多様な選択肢のひとつとして、見受けられるようになっている。

小林さんは、コペンハーゲン滞在中に50歳でドナー提供により出産したデンマーク人のカーンさんに偶然出会い、この事実を知った。ひとりでの出産を決意したのはどんな女性たちで、その背景にはどんな思いがあるのか。また、シングルマザーの家庭は子どもたちにどんな影響を与えるのか。

世界最大の精子バンクであるデンマークのクリオス・インターナショナルへの取材、そしてケンブリッジ大学の家族研究の教授であり、生殖補助医療による家族関係の知見も深いSusan Golombok(スーザン・ゴロンボク)さんの最新著書「We are family: what really matters for parents and children(私たちは家族:親子にとって本当に大切なこと)」を元に探りたい。

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精子バンク利用者の54%がシングルマザーに

クリオス・インターナショナルによると、ここ5年間で急激に独身女性の利用者が増えているという。下記の図が示す通り、2020年には独身女性の利用者が54%にまで伸びている。

近年の利用者の性的指向分布(2017年3月〜2020年11月に実施した、デンマーク本社の精子提供を利用して不妊治療を行った45ヵ国、3151名の女性へのアンケート結果より) 画像/クリオス・インターナショナル提供

デンマーク国内のヘルスケアシステム「The Danish Healthcare System (Sundhedsstyrelsen) 」の統計でも、過去10年間のデンマーク人の独身女性による不妊治療、出産数ともに増加が見られる。不妊治療を受けた女性は2010年が1215人、2019年が1967人だった。また、不妊治療で妊娠した女性は2010年が354人、2019年が729人だった。

シングルマザーを含めた全利用者の年齢分布は、31〜35歳が24%、36〜40歳が44%、41〜45歳が19%と30代後半以降の女性が過半数を占めている。数年前と比較すると、近年はこの傾向が高まっており、特にシングルマザーは顕著。シングル女性のうち52%が36〜40歳で不妊治療を受けているそうだ。

上述したアンケートの最終学歴の分布。修士号やそれ以上の学位を取得した女性が55%を占める 画像/クリオス・インターナショナル提供

精子提供を利用する女性の教育水準は非常に高く、学士以上の学歴を持つ人が87%と大多数となる。シングルマザーに限っても同様の傾向があり、追って紹介するゴロンボクさんの著書でも選択的シングルマザーの女性たちの学歴が高い事実に触れられている。