ヤマザキマリさん(左)と中野信子さん(右) 撮影/森清

「有名人は“得している”から生贄にピッタリ!」は脳の指令だった

中野信子×ヤマザキマリ対談
「なぜ、あの人だけいい思いをするの!」幸せそうな人を見るとモヤッとする誰にもある負の感情。ヒトは誰もが生贄を求め、自分も生贄になる運命にあります。
脳科学者・中野信子さん、中東からヨーロッパ、アメリカとさまざまな異文化で学び暮らしてきた漫画家・ヤマザキマリさんの共著『生贄探し 暴走する脳』で、その、不条理さを歯に衣着せず分析。
そして、生きにくさから自由になる方法を提案します。

フェラーリで上がる男性ホルモンの値

中野 誰にとっても自分が大事というのは生物の基本原理ですし、そうでなければ現在、生き残っていない可能性大です。でも、誰にとっても自分が大事だから、他者を傷つけないでおこう、そこの思考のジャンプができる人とできない人がいるのですよね。

ヤマザキ 車の運転で人格が変わる人がいますけど、ツイッターにも似ている要素がありますね。

中野 似てますね。たとえば、あおり運転などの報道を見ていると、免許を持っていても運転するのが怖くなります。アバターを使った実験があるのですが、自分のアバターを変えるだけで、自尊感情が向上するというのがわかっているんです。また、高級車のほうが違反が多いというデータもありますね。フェラーリとカローラとを比べると、フェラーリに乗るほうがテストステロン値は上がるとわかったのです。

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ヤマザキ 自尊心が誇大化するんですね、車もSNSでの発言も実態を覆う甲冑ですから。

中野 男性ホルモンの値が上がって、攻撃性が増してしまうんですね。たぶん昔の武将などは、名の知れた甲冑を身に着けるだけで人格変容する、ということもあったのではないでしょうか。

ヤマザキ フェラーリだとまたみんな振り返りますしね。承認欲求の顕在化。

中野 今だと高級時計とか、トロフィーワイフなどですかね。

ヤマザキ トロフィーワイフもあればトロフィーハズバンド、今まさにまったく同じこと考えていました。

中野 (笑)。月並みですが、やはり人間は物質的に満たされるとどこか病んでしまうのですかね……。コロナ禍が起こって、実は、こういうことを客観的に眺めることができる時間が増えたことは、現代人にとってまさに立ちどまって考える時間を与えられたという意味では、よかったと思うんですが。

ヤマザキ ひとつの共通した問題を、世界のすべての国々や人々が同時に抱える機会など滅多にありません。安泰な時間が多すぎても問題ですが、足りない分にはいろいろなことに気がつくチャンスがもたらされる。

中野 足りないとより知的になる人と、足りないとパニックになり、より鈍ってしまう人の両方がいますね。ただこれも、文化と教育のリソースが豊かであれば、前者の人をより増やせると思うのです。必ずしも物質的に豊かなことが幸福にはつながらない具体例として、古代ローマは大きな実験データになっているんですね。

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