「私が損をしているのだからお前も損をすべき!」

足を引っぱりあう日本人脳 *中野信子
中野 信子, ヤマザキ マリ プロフィール

世界でもいじわる行動が突出している日本人

大阪大学社会経済研究所の実験をご紹介します。

実験としては、おたがいにお金を出資して公共財(道路)を造ろうというゲームをしてもらいます。プレイヤー同士がおたがいにどんな行動をとるかによって自分の損得が決まるというルールで、心理的な駆け引きが見えてくるようになっています。

この実験によれば日本人は「スパイト行動」、つまり「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」が顕著であったというのです。日本人は他人が利益を得ようとして自分を出し抜くことを嫌います。いわゆる「フリーライダー」を許さないのです。

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タダ乗りする奴を許してはならない、なぜなら許せば社会の損失となるからだ――そうした内的な動機づけが行われて、自分が損をしてでも他人の足を引っ張ろうとするのです。そして、この傾向は世界のほかの国の人々には見られなかったというのです。

なぜ、日本でだけこの現象が見られるのでしょうか。日本人が、人の足を引っ張る行動をとる背景には、何があるのでしょうか。

「出る杭は打たれる」という諺(ことわざ)がありますが、これは非常に日本的な発想であると言えます。海外ではそれに該当する諺がないか、日本ほどは強く言われないようです。

一方で、日本人の社会的振る舞いは、たいへん節度のあるものであり、控えめで美しいと、海外から称賛されることもしばしばです。親切さ、礼儀正しさ、真面目さ、協調性など、われわれ自身も誇らしく思えるものでもあります。しかし、これらは一見、美しく見えますが、本質的なところはどうでしょうか。

もし、これらの性質が、実際はスパイト行動で自分が怖い目に遭わないための同調圧力に起因するものだとしたら。

『空気を読む脳』(講談社+α新書)で詳述しましたが、日本特有のこういった風潮の成り立ちについては、遺伝的な要素も絡む、一定の生理的な理由が考えられます。セロトニンの動態によってその人の、他者の得に対する態度が左右されるのです。

面白いことに、この実験では、ゲームが進むにつれて、プレイヤーは協力的になっていきました。これは、協力せずに自分が出し抜こうとしたら仕返しされるリスクが高いため、その恐怖が大きくなっていくからであると考えられます。

この結果についても、他国ではこのような傾向が見られませんでした。要するに、日本人は他人が得するのを許せない、そして、意地でも他人の足を引っ張りたいと考えている、ということが図らずも証明されてしまったわけです。協力的な姿勢になるのは自分も同じ目に遭うのが怖いからなのだ、ということになるでしょうか。

ただ、私はこのことをもって、単純に日本人が性悪だとは思いません。美しい国を守るためには、ときにはこういった毒をうまく使いこなすことも必要でしょう。

いずれにしても、とても興味深い結果です。

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