著者:中野信子 撮影/森清

「私が損をしているのだからお前も損をすべき!」

足を引っぱりあう日本人脳 *中野信子
「なぜ、あの人だけいい思いをするの!」幸せそうな人を見るとモヤッとする誰にもある負の感情。ヒトは誰もが生贄を求め、自分も生贄になる運命にあります。
脳科学者・中野信子さん、中東からヨーロッパ、アメリカとさまざまな異文化で学び暮らしてきた漫画家・ヤマザキマリさんの共著『生贄探し 暴走する脳』で、その、不条理さを歯に衣着せず分析。
そして、生きにくさから自由になる方法を提案します。

自分が損してでも他人をおとしめたい

「日本人は親切だ」「日本人は礼儀正しい」「日本人は真面目だ」「日本人は協調性がある」というお決まりの褒め言葉があります。

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確かにそのとおりでしょう。でも、日本人として日本に長く暮らしていると、手放しで喜んでよいものなのかどうか、一抹の不安もよぎります。これは一面的な見方であるかもしれない。本当に美しい心からそういう振る舞いがなされているのだろうか。そんなきれいごとで説明できるような国民性であったら、あっという間に悪意を持った他者/他国の餌食にされてしまうのでは?

コーネル大学のベス・A・リビングストン、ノートルダム大学のティモシー・A・ジャッジ、ウェスタンオンタリオ大学のチャーリス・ハーストが行った研究によれば、協調性の高さと収入のレベルは反比例するといいます。誤解を恐れずに言えば、いい人は搾取されてしまうということです

冷静に考えれば、親切で礼儀正しいのは、相手に対して無礼に振る舞ったことが広まって誹謗されることによる不利益を被るリスクを抑えるためであったり、真面目なのは誰かから後ろ指をさされて村八分にならないための自衛行為であったりもします。協調性があるというのも、そうしなければ本当に困ったときに誰も助けてくれないかもしれないからという理由が隠れていたりもします。

表向き、整った姿が見えているだけで、その裏には見なかったことにしなければならない闇の部分が口を開けている……。そんな闇があるからこそ、地理条件が偶然に助けているばかりではなく、日本人は自身の力で独立性を保っていられるのだとも言えます。きれいに整った穏やかな笑顔の下に、適切な量だけ毒々しさを隠し持っている日本の共同体の姿を、多くの人は、私などよりもずっと、経験的に知っているはずだと思います

そんな日本社会の中で、生きづらさや息苦しさを感じたり、なぜ合理的な仕組みを築くことができないのかと憤慨したりする人も多いでしょうが、根本的には日本人のこうした逆説的な良い意味での「悪い」性格が原因となっているとも言えます。

残念ながら(?)、日本人は他国よりも顕著に「スパイト行動」をしてしまうという結果が報告されたわけですが、このスパイト行動とは、相手の得を許さない、という振る舞いのことです。もっと言えば、「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」とでも言えばよいでしょうか。

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