執着は、自分自身を停滞させる気がする

「私、執着心がないんです」

長年、女優をはじめとした、いわゆる“表舞台に立つ人”を取材してきた。それでも、取材現場にやってきた瞬間に、その迫力に圧倒されるほど存在感を放つ人は滅多にいない。自然光の入るラウンジに菜々緒さんが現れた瞬間、“ゴージャス”としか言いようのない空気が漂った。

でもいざインタビューが始まってみると、そこに威圧感は全くない。質問に答えるときの表情には不思議な余裕があって、こちらの方がずっと年上なのに、頼れる感じ。話す内容も、表情も、とにかくサバサバしている。その風通しの良さの秘密が探りたくて、色々質問攻めにしているうちに、彼女の口から冒頭の言葉が飛び出した。「執着心のない女」。なるほど彼女の周囲から愛される理由は、その辺にあるのかもしれない。

撮影/岸本絢
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「今32歳ですが、初めてガッツリお芝居をさせていただいたのが23歳だったので、年齢の割にはお芝居のキャリアは浅いんです。その作品が、東村アキコさんの漫画が原作の『主に泣いてます』というドラマで、自分が予想もしていなかったタイミングで作品に出させていただいた。あまりに私の人生の中でのサプライズな出来事すぎて、『お芝居とは?』『女優とは?』なんて考える暇もないまま、次のお芝居の現場で、また必死になって。その、毎回毎回ただ必死に食らいついていく感じが、30代の今も続いています」

菜々緒さんが自分を「執着がない」というのは、主に自分の立ち位置や未来のことについてだ。「必死で食らいつく」と発言している時点で、向上心があることは言うまでもない。ただ、この先どうなりたいとか、〇〇監督の作品に出たいなどの、自分や他人への期待は持たないようにしているだけだ。

「もちろん、過去には自分の好奇心や向上心を目標に置き換えて『頑張ろう!』と気負っていた時期もあります。でも、自分や周りに期待してしまうと、叶わなかったときのダメージが大きいじゃないですか。先輩たちの背中を見て、『いいな』って憧れることはしょっちゅうですが、執着って、自分自身を停滞させる気がする……というか(笑)。『こういう役を演じたい』と思っても、オファーがなければ何者にもなれないのが役者です。執着心が強いと、一旦負のループに入ってしまったとき、なかなか抜け出せなくなってしまうような気がするんです。20代でお芝居をやらせていただくようになって、何度もつまずいたり転んだりする中で、悟ったんです。私のような、大人になってから芝居の魅力に気づいたタイプの場合、“こじらせないことが個性”なんじゃないかって」

撮影/岸本絢
プロフィール)菜々緒(ななお)
1988年生まれ。埼玉県出身。映画のホームページに100人の演者の秀逸なプロフィールが掲載されているので引用。「日本人離れしたスラっとした容姿(※編集部注:なんと九等身!女性が選ぶ理想のボディランキングで5年連続1位を獲得)と確かな演技で連ドラ・映画・CMモデルとして大活躍中の女優。猪突猛進型で『間違ってる!』と思ったらすぐ署名活動してしまうタイプ(※編集部注:これは映画の設定)。ガッツがあって泥臭い一面があり、スタッフが大変なら率先して照明のレフを持つ。天海祐希の大ファンで、本人を前にするとうっとりしてしまう」5月21日公開『地獄の花園』での史上最強のOL役も既に話題。インスタのフォロワーは260万人を超える。