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臓器移植患者を置き去りに…斡旋組織のずさんな対応と言い分

臓器売買とヤミ移植の実態・その3
臓器移植を受けたい患者たちにつけこんで、極めてグレーな海外での臓器移植の斡旋を行う組織がある。T大学ラグビー部のOコーチの「海外移植計画」にも斡旋組織が深く関与していたが、この2つの組織には黒い噂が後を絶たず、昨年ブルガリアで移植手術を受けた患者2人は死亡してしまった。ジャーナリストの高橋幸春氏が、前回に続き「ヤミ移植」業者の実態に迫る。

第1回:苦しむ患者に忍び寄る、「ヤミ移植」斡旋業者の怪しい素顔を追って
第2回:ブルガリアでの臓器移植を斡旋した業者の、無責任と非情

二人のレシピエントの死

ブルガリアで腎臓移植を受けた患者は、羽田空港に到着した直後に死亡した。日付が変わるまで2時間、73歳の誕生日を目前にした死だった。

肝臓移植を受けた患者のほうは、首都・ソフィアにあるL病院のICUに入ったまま死亡した。まだ42歳という若さで、二人の子供の父親でもあった。

肝臓移植を受けた患者には、父親が最初から付き添った。

「倅(次男)の症状が日々悪化し、移植を受けなければいずれ死に至ることがわかっている。渡航移植に問題があることがわかっていても、次男もそれに頼るしか方法がなかっただろう」(患者の父親)

患者はインターネット上にHPを立ち上げている斡旋組織に行きつき、そして今回の悲劇を迎えた。

しかし、二人のレシピエントは元気になって帰国できると信じ切っていた。健康を取り戻して日本の土を踏めると思っていただろう。

イスタンブール宣言以降、海外で移植を受けたレシピエントは、術後のケアと免疫抑制剤を処方してくれる病院、医師を探すのに苦労する。

日本移植学会の江川裕人理事長が、「警察に通報することを了解すれば治療する」と明言しているように、臓器売買が疑われる海外での移植患者の受け入れに、移植学会に所属する医師は当然慎重になる。

しかし、二人の患者をブルガリアに送った斡旋組織のHPにはこう記されている。

「どうぞご安心ください。私共でお世話させていただいた患者さん方は、皆さん例外なく豊富な経験を有する移植専門医の手厚いアフターケアの下、免疫抑制剤の調整・処方を受けておられます」

帰国後の治療は、腎臓移植を受けた患者は徳洲会宇和島病院へ、そして、肝臓移植を受けた患者は徳洲会湘南鎌倉総合病院へ行くように指示されていた。

患者はICUに入ったまま亡くなった(photo by iStock)

病院の理念を悪用

二人をブルガリアでの移植に導いた30年以上の歴史を持つ斡旋組織MTBU。その中心人物Nと患者とのラインのやりとりが、私の手元にある。

「徳洲会は基本的に『命だけは平等だ』『絶対に受け入れを断らない医療』『24時間診療』『医療費を支払えない患者に生活費を支援する』をスローガンに、患者を断りません。

ただし立場上、事前に相談すると断られる口実を与えてしまいますから、いきなり外来に行き、移植難民を装う方が良いでしょう。

肝臓のスペシャリストが多数いますから、むげに断られる事はないはずです」

こうした情報が患者側に伝えられている。

徳洲会の理念を悪用しているとしか思えない。Nは、徳洲会に予約なしで飛び込めと指導しているのだ。

パキスタンの民家で移植手術を行っていた、やはりイニシャルNの斡旋ブローカーも、まったく同じ内容を患者に告げていた。

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