ゆっくり身につけてほしかった

『森の学校』の後、西垣監督は、春馬さんと交流があったのだろうか。
「交流はなかったです。俳優には、カメラの前に立ってくれることを望んでいます。撮影所に来ていると聞いたこともありますが、会いに行っていません。

でも、成長の嬉しさは感じていました。芸事は、大変な世界。例えば、日舞も三味線も、乗馬も剣術も、いろいろやらなければいけない。所作や作法を、時間をかけて、ゆっくり身につけていってほしいと思っていました」

五代友厚を演じた『天外者』では見事な殺陣も披露している。写真はノベライズのもの 
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だからこそ、2020年のニュースに衝撃を受けた。

「(急逝したと聞いて)驚きで、信じられない思いでした。これから日本の映画界・舞台を背負っていくと思っていたので、残念です。春馬くんは、『役者』と言えるスター。言い方が難しいけれど、演技をする人でも、タレントになってしまうことが多いでしょう。

役者は、これでいいという到達点がなく、一生精進しなければなりません。それができる人であったろうと思います。将来、70歳ぐらい、いやもっとかな……年を重ねて、地元茨城の偉人・水戸黄門でも演じてくれたらと期待していました」

18年たち再注目、数分でチケット完売

『森の学校』は、公開から18年たって、再び注目された。
「2002年にスタートした時は、宣伝もかけられないし、自主制作という感じの作品でした。公開した頃は、春馬くんは、大河ドラマなどには出ていましたが、まだ知られていませんでした。『森の学校』の春馬ファンは、全国で1000人もいなかったと思います。

この数年は、自主上映が年に数回、あるかどうかでした。春馬くんの急逝を受けて、上映したいと声がかかっても、フィルムだったので難しかった。2002年に上映がなかった地域もあり、見ていただきたいと思いました。ファンのリクエストで上映が決まる『ドリパス』でやりたいと声をかけられ、デジタル化しました。

ドリパスのサーバーがパンクするほどの反響で、昨年末の販売分は、数分で売り切れました。全国に上映が広がり、再上映や延長も相次いでいます。映画の作品として、正当な評価をしてもらっていると思います。文部省特選がつき、杓子定規に『教育映画』なんて言われますが、普通に親子3代で、映画館で見てもらいたい映画ということは変わっていません」