「平等な競争」が担保されている海外

しかし、世界には欧米を始め競争的資金増強の狙いが外れていない国が少なくない。

それらの地域が持つ特徴としてまず挙げられるのが、基盤的資金をそもそも日本ほど軽視せず教育や研究の基盤作りを大切にしているという点だ。これにより、研究者が研究以外の業務に追われ自身の研究活動に集中できなくなるという事態が避けられている。

加えて、欧米を始めとした世界の多くの地域では、「競争」の平等性が日本より格段に高い

例えば私が働いてきた米国や欧州を含む世界の多くの地域では、競争的資金の個人の申請への審査を、世界の研究者に依頼するケースが標準である。私も先日、チリの申請書の審査を行ったばかりであるし、米国のNASAでは、旅費を支給して世界中から研究者を一箇所に集め一つひとつの申請書への詳細な審査をしている。こういった努力が、実績に引きずられない内容重視の審査を実現させている。

〔PHOTO〕iStock
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日本はいつまで若者から搾取し続けるのか

対して日本の競争的資金の審査は基本的に国内に限られ透明性も低い。さらに指定される申請書のページ数も少なく、詳しい研究内容を記述できない場合が多い。このような状況では、資金を獲得した実績の少ない若手が圧倒的に不利である。言い換えると、日本では競争的資金を獲得するチャンスが、既に実績のある主にシニアの研究者に偏って与えられているのだ。

このように現在の日本の研究業界では、基盤的資金の削減が若手から長期職に着くチャンスや実績を積み上げる体力を奪い、競争的資金の増強が若手から実績を積み上げるチャンスをも奪い、結果として、既に安定した職を得て実績も築いている研究者ばかりがさらに実績を積み上げられるという「若者からの搾取」の構図が出来上がっている。