明らかにされにくい、子ども虐待の現実

「養父のわいせつ行為はすごく嫌だった。でも、誰かに言えば、家族に迷惑を掛けると思った」

「レイプされ、親に言ったら『汚らわしい』と言われて、誰にも言えなくなった。学校では平気なふりをしていた」

「家では父の言うことは絶対だった。いう通りにしないと竹刀で殴られた。毎日、学校から帰るときの絶望感。泣きそうになるのを我慢していた。でも、周囲に喋って父親が悪者にされるのは嫌だったし、父親にもっと嫌われるのが嫌だった。学校でも誰にも言えなかった」

「父からの性虐待で、カウンセラーに話せるようになったのは被害から20年以上たってから。今でもカウンセラーとツイッターでつぶやく以外には、誰にも言えない」

これらは、SNSに書かれた。性暴力や虐待被害の経験者たちの悲痛な声だ。

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もし、自分が性暴力や虐待の被害者となり、事情聴取や裁判に立ち会うことになったら…、と想像してみてほしい。忘れてしまいたいほどのつらい出来事を再体験することでもあり、大人でも相当な精神的苦痛を伴うことだ。ましてそれが子どもだったら……。

そんな場面で、子どもたちに寄り添う犬がいる。「付添犬」。虐待や性被害にあった子どもが、司法面接や裁判に望む際に、心理的負担を軽減するために付き添う犬のことだ。発祥の地・アメリカでは「コートハウス・ファシリティ・ドッグ」として、261頭の犬が活躍しているという(2021年3月27日時点)。日本では、4頭の付添犬が活動している(2021年4月時点)。

児童虐待は家庭内という密室で起きていることや、子ども自身が開示できないために、発覚しにくいと言われる。

児童虐待では、子どもが虐待を虐待と認識していなかったり、家族のことを思って起きたことを説明したがらないというケースもある。小さい子どもが性的虐待を受けていた場合、行為そのものや体の部位を表現することさえ上手くいかないという問題もある。だから、事実認定が難しく、裁判に進んだとしても、証拠不十分で不起訴や無罪判決となることも少なくないのだ。

虐待などで傷ついている子どもへの聞き取りは、二次被害を起こさないように子どもの立場に立った優しい気遣いやきめ細かな対応が求められる。その支援の一つ「付添犬」の活動を知るにつれ、これは広めていかなくてはいけないと感じた。活動を日本に導入した弁護士やハンドラーの方々の声を聞いてほしい。

付添犬のフラン(左)とハッシュ(右)。2020年12月18日に、厚⽣労働副⼤⾂ 三原じゅん⼦⽒を表敬訪問したときの写真。写真提供/JAHA