ギリギリの精神状態で本当に怖かった

――「七恵やレイのように、とまではいかないものの、『絶対に生ききってみせる』という強い覚悟を持った瞬間はある」と、さとうさんは言います。

「数年前に、腱鞘炎で左手が動かなくなってしまったんです。バンドのツアー中だったので、何とか右手でカバーしていたんですけど、手が使えなくなってしまうのはドラマーにとっては致命傷。でも絶対に音楽は続けたい。そんな、自分の生命線でもあるものが壊れかけているという状況に直面したとき、自分の中には『どうにかしてやっていくしかないんだ』という思いしか沸き起こらなかったんです。

ギリギリの精神状態で本当に怖かったですけど、完全に壊れる日までは何としてでもやりたいことをやり抜いてみせる、とある意味腹が座った瞬間でもありました。……まあ、幸いなことにすぐに治ったんですけど(笑)、あれは自分にとっても興味深い心理体験でしたね」

撮影/山本光恵

――俳優としては、もし活動ができなくなってしまったとしたら、どのようなことを思い残すのだろうか?

「やはり、もっともっといろいろな役をやりたい、というのが……。だから今回、芝居的にも精神的にも背負うものが膨大にある七恵という役に関われて、本当に良かったと思っています。また七恵のような役をやりたいかと言われると、それよりも、今回ご一緒した廣木隆一監督ともう一回共演したいですね。廣木監督は、映画が描きたいものがある中で、それでも役者が演じたいように演じていい、というスタンスを取ってくれるんです。

だからなのか、長回しで撮ってくれることが多いのも私は好きで。芝居を細かく切られないので、その時間を役としてちゃんと生きられるんです。もちろん今回も『まだまだやれる』と思い残すことはたくさんありますが、七恵としていた時間は、辛かったけど幸せな時間でもありました」

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