深海魚は「地震の予兆」!?
深海魚の一種「リュウグウノツカイ」。成長すると全長5m以上にもなり、「人魚のモデル」とされる魚だ。
大型の個体が海岸に打ち上げられると、その特異な姿から多くの人々の目を引き、「地震の前兆現象では?」と話題になる。実際のところ、深海魚と地震にはどんな関係があるのだろうか?
最新情報を追ってみた。

壊滅的な被害を生んだ深海魚の「たたり」
江戸時代中期に出版された『諸国里人談』(しょこくりじんだん)という本に、こんな話が出てくる。
若狭国(現在の福井県南西部)で、岩の上に人魚がいるのを漁師が見つけた。もっていた櫂(かい)で殴ったら、人魚は死んでしまった。
海に投げ込んで帰ったところ、そのあと大風が起きて海鳴りが17日間も続き、30日ほどすると大地震が起きた。山から海辺まで地面が裂け、村がまるごとなくなってしまった──。
この物語中に登場する人魚は、「鶏冠(とさか)のごとくひらひらと赤きもの」を身にまとっていたとされる。赤みを帯びたひれをゆらめかせて泳ぐ、「リュウグウノツカイ」を彷彿させる表現だ。
深海魚をいじめたら、その「たたり」で地震が起きた。そんなふうに読み解くことができる物語なのだ。この『諸国里人談』の記述からは、昔の人々も「深海魚の出現」と「地震の発生」を関連づけて考えていたらしいことがうかがえる。