4月8日は「花まつり」。この日はお釈迦様の誕生を祝う灌木会だという。色とりどりの花が花御堂に飾られ、御稚児行列が行われることもある。

この「花」は桜のことではないけれど、やはり日本人にとって「春の花」として多くの人が筆頭に思い浮かべるのは桜の花だ。

コロナ禍で花見の宴をすることはできなくとも、桜の美しい場所を歩いた人も多いことだろう。入学式や卒業式で満開の桜を前に記念撮影をした人もいただろう。今年は3月早くから咲き始めた地域も多かったので、卒業式で満開で、入学式は葉桜だったかもしれない。開花が遅く長く咲く八重桜でお祝いしたかもしれない。いずれにせよ、桜の花は新しい門出を祝ってくれる大切な花だと言える。

東京・千鳥ヶ淵の桜は3月末には満開となった(2021年3月27日)Photo by Getty Images

その「日本の桜」が愛されているのは日本だけではない。

日本から寄贈された桜が愛されている

ワシントンDCの桜(2021年3月27日) Photo by Getty Images。

水辺にうつる桜並木……中でも日本人になじみが深いソメイヨシノの桜並木を見ると、日本の春の風景だなと感じる。

しかし同じような風景を、世界の他の地でも見ることはできるのだ。例えば毎年3月中旬から4月中旬にかけてアメリカ・ワシントンDCで開催されている「全米桜祭り(National Cherry Blossom Festival)」。「ワシントンに桜を観に行く」というのはアメリカでは日本で京都の紅葉狩りや花見と同じように使われている。ワシントンDCのポトマック公園にあるタイダルベイスンという入江周辺などに植えられた桜が満開となり、例年世界中から観光客が集う。コロナ禍の2021年は旅行に行くにも隔離期間などが必要なため、3月20日から4月11日までやや縮小傾向で開催。新型コロナの影響でオンラインでショーを見られるようになっており、ドリュー・バリモア、クリスティーナ・ヤマグチ、エイミー・グラントなどが出演するという。

こうしてワシントンDCにはなくてはならないものとなった「桜」は、アメリカ・ナショナルジオグラフィック協会の理事が日本の桜に魅せられ政府に植樹を提言、20年を超える交渉を経て実現させ、1912年3月27日に日本から贈られたソメイヨシノなのだという。それから1920年にかけて植樹された桜と、1960年代に追加で贈呈された3000本以上の桜は、いまやワシントンDCの代名詞の一つとなった。

ワシントンDCだけではなく、ストックフォルムや中国、バンクーバーなどでも日本から寄贈された桜が花を咲かせている。中国など、野生の桜が有名なところももちろんある。ソメイヨシノと野生の桜については、青山潤三さんの「中国人も韓国人も「日本の桜」が気になって仕方がない理由」にも詳しい。

2021年4月6日、カナダのバンクーバーで撮影された写真 Photo by Getty Images 

ひさかたの 光のどけき春の日に しづ心なく花のちるらむ

百人一首でもおなじみの紀貫之のこの短歌。光がのどかにさしているこの春の日に、なぜ落ち着いた心もなく、桜の花は散ってしまうのだろう――こうして限られた期間しか見られない美しさは、その価値を高める。この一瞬の儚さを知っているからこそ、今を大切にしたいと強く感じさせる。桜への想いは、時代も超えて共通している。

コロナ禍で旅をすることはまだ難しいが、国や人種を超え、世界中で日本の桜が「今」こうして愛されているのだ。