僕が跳びはねる理由』は、現在28歳になる自閉症者の作家・東田直樹氏が13歳の時に執筆し、34カ国で出版されて世界的なベストセラーとなった本『自閉症の僕が跳びはねる理由』にもとづいたドキュメンタリーだ。本作では東田氏が綴った言葉をナレーションに、世界各地の5人の若い自閉症者たちから見た世界、そして、彼らをとりまく社会的課題を映し出す。

同書を英語に翻訳したイギリス人作家デイヴィッド・ミッチェル氏と妻のケイコ・ヨシダ氏にもまた自閉症の息子がいる。東田直樹氏の本のどこが画期的で、どのようなインパクトを社会に与えたのか――。デイヴィッド・ミッチェル氏に聞いた。

デイヴィッド・ミッチェル氏/『僕が跳びはねる理由』より

息子の行動がまったく理解できなかった

――なぜこの本を訳そうと思われたのでしょうか?

デイヴィッド・ミッチェル(以下、ミッチェル): 妻のケイコが日本語で書かれた直樹の本を英語に訳しながら、キッチンで読んでくれたんです。当時3歳だった私たちの息子は自閉症を抱えていて、不可解な行動を起こすことが多かった。息子の行動がまったく理解できなかった私たちは、この本を読んで息子の頭のなかが理解できるようになりました。直樹の本には深い感謝の念を覚えましたが、同時に、自分たちがあまりにも息子を理解できていなかったことが恥ずかしくなりました。

『僕が跳びはねる理由』より
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――不可解な行動とは、東田氏が書かれているように、急に跳びはねたり、叫び声をあげたりすることでしょうか?

ミッチェル:はい、直樹の行動と息子の行動にはかなり共通点がありますが、一番つらいのは、ハッピーで笑っているかと思えば、次の瞬間、涙を流して悲しんだり、頭を壁に打ち付けて自分自身を傷つけたりする行動です。

当時、児童精神科医からは「そういう行動を起こすトリガーを見つけなければいけない」と言われていたんですが、トリガーが皆目分からない。息子が悲嘆に暮れ苦しむ様子を見ても、「愛している」とギュッと抱きしめるしか術がなく、私たちが息子の支えになっているのかも分からず、途方に暮れていたんです。