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0.999…=1? 意外と知らない掛け算、割り算の記号「×」「÷」の本質

なっとくする数学記号

「×」と「÷」はいつから使われていたのか

×は掛け算の記号で,÷は割り算の記号である。双方ともよく見慣れた演算の記号であろう。

÷は×の逆の演算であり,×は÷の逆の演算である。つまり,6を2で割っても2を掛ければ6に戻る。式で書けば,6÷2=3, 3×2=6,または(6÷2)×2=6である。同様に,2に3を掛けても3で割れば2に戻る。同じく式で書けば,(2×3)÷3=2ということである。

×が最初に使われたのは,1618年にイギリスのエドワード・ライトが対数(log)の発明者のイギリスのネイピアの注釈本を出したときである。このときは,大文字のX(エックス)が使われたが,1631年に出版されたイギリスのオートレッドの著書『数学の鍵』の中で,今日の×が初めて使われた。ドイツのライプニッツは,「私は乗法の記号として×を好まない。それは容易にX(エックス)と混同するからである」と述べて,「∙」により積を示すとしている。

オートレッドの著書『数学の鍵』に登場する記号「×」

割り算÷の記号は,一時は引き算の記号としても使われたこともある。フランスでは,現在も÷は用いずにライプニッツが愛用した「:」を使っている。

記号の導入とは関係なく,掛け算や割り算そのものは古くから行われていた。

日本では万葉の時代にはすでに九九が中国から伝わっており,宮廷の子女の教育に用いられた平安期の教科書『口遊(くちずさみ)』の中にある。当時の歌の中で,三五月と書いて「もちづき(望月,満月のこと)」と読ませるなど,三×五=十五夜の月(満月)をもじったものがある。歌にそれとなく気持ちを読み込んで愛を表現した千年以上も前の時代には,このようなハイセンスを必要としたのである。

×の逆の演算である÷をどう定義するか

数学は演算なしには考えられないともいえるが,特に演算の構造を扱う分野を代数学という。

数学では,演算を考える際には必ず,「もとに戻す」という逆の演算を考えるのが普通である。それは計算を自由自在に行うためであり,+と−もその関係にある。

同じように,実数では掛け算やその逆の演算である割り算が自由自在に行える構造になっている(もちろん,割り算は0を除いておく必要がある)。つまり,実数は掛け算に関しても群と呼ばれる代数的構造を持っているということである。

×の逆である演算÷は,方程式z×a=bの解zを求める演算として定義される。つまり,aの逆数1/aを考え,z=b×(1/a) としてzが定まる。このようなzをb/a(またはb÷a)と書いて,「商」と呼び,新しい演算「割り算」を導入するのである。

割り算は掛け算の逆として導入したが,1を3で割ると,

1÷3 = 0.333…

となり,これに3を掛けてみると,

0.333…×3= 0.999…

となる。1に戻っていないじゃないか,と不思議に思うかもしれない。実はこれは×, ÷ という演算のせいではなく,数の表記の方法に問題があるのだ。

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