歳出は増えるが、税収は下ブレし、「ワニの口」の拡大が止まらない状態です。今回の財政出動は必須のもので、その是非は問うまでもありませんが、結果として財政に与えるダメージは残りました。
国の社会保障や公共事業など、さまざまな政策を実現するための経費(政策経費。国債の元本返済や利払いに充てられる国債費という費目は除きます ※1)が、税収や税外収入などで賄えているかどうかを示す指標は、プライマリーバランス(PB)と呼ばれます。
家計に例えるなら、給料収入(税収等)で、ちゃんと生活費(政策経費)が賄えているかどうか、という目安で、生活費のやりくりのために借金をしている場合は、PBは赤字、ということになります。PBがゼロに近づくのが、これまで言われてきた健全な財政運営なのですが、前述の通り、いまの日本は「健康とは程遠い状況」に陥っているわけです。
もし、今回のコロナショックからほどなく、次なるパンデミックが発生するような事態に陥るなら、日本も世界も対策の財源を賄いきれなくなる可能性が高まります。
就任直後に、増税は「10年はない」と明言した菅義偉首相の手前、増大した国債残高をやりくりするため、社会保障費の削減と社会保険料の引き上げが待ったナシで始まり、あらゆる所得層で可処分所得の縮小が始まっています。
一方で、国の施策では持ちこたえられなくなった業種で、中小企業から順に経営破綻や人員整理が続出し、対照的に“勝ち組”の伸長が極端に目立ちはじめ、いよいよ二極化が深まっていくでしょう。
業種では飲食、宿泊などのサービス業が低迷し、DX(デジタルトランスフォーメーション。組織のデジタル変革)関連、ゲーム産業などの好調ぶりとくっきりと差がついていきますが、同じ業種のなかでもコロナ禍以降の変化にどう対応しているか、その違いによって企業ごとに勝ち組と負け組の差が生じ始めるでしょう。