現実世界を映し出す「きかんしゃトーマス」の多様性

――「きかんしゃトーマス」には多様なきかんしゃや人間が登場しますよね。欠陥の多い、実に人間的なキャラクターばかりで、キャラクター同士の関係性も変化し続けます。

小田先生:そこがトーマスの世界観の非常にユニークな点ですよね。例えば、新作映画『おいでよ!未来の発明ショー!』では、アフリカ系の女性発明家ルースや日本から来た超特急のケンジが初めて登場します。人種やジェンダーが多様なうえに、今回はロボットも出てきます。

ここには、現代の子供たちがこれから生きていく、20年、30年後の未来が映し出されています。これから技術がどんどん発展していって、ロボットが彼らの生活の一部になる。例えば、ロボットが暴走するシーンがありますが、ロボットを単に素晴らしい未来の機械として描いているのではなく、「ロボットを作り出す人間」「ロボットを操縦する人間」、そして「ロボット」という3つの異なる立場にいる者が織りなす関係性の未来が表現されているように思います。機械と人間が作り上げていく新しい世界は素晴らしいけれども、そこには人間の責任も伴う、というメッセージも込められていると思います。

女性発明家のルース(右)〔PHOTO〕『映画 きかんしゃトーマス おいでよ!未来の発明ショー!』より

――映画の後半は未来よりも、きかんしゃ同士の葛藤が描かれています。

小田先生:世界最速の超特急ケンジが日本から来るときに、ソドー島のきかんしゃは皆、自分の居場所がなくなるのではないかと心配します。彼らは自分たちより優れたきかんしゃに出会って、自己肯定感や自尊心が揺らぎます。既存の調和が保たれた世界に未知のものがやってくる。自分たちは今まで通りでいられるのかどうか……。

こういうときにこそ、非認知能力が試されるわけです。そこで、不安にとらわれたままでいるのではなくて、ケンジを受け入れ仲間にして新しい関係性を作り上げていく。まさに、子供と大人も、日々直面する課題ですよね。子供にとっては初めて行く保育園や幼稚園で新しい友達を作るときに似ているかもしれない。そういった意味でも、「きかんしゃトーマス」の物語性は非常にリアルな人間の生活に近く、子供たちがしなやかに生きるためのヒントになると思います。

超特急ケンジ〔PHOTO〕『映画 きかんしゃトーマス おいでよ!未来の発明ショー!』より