評価されなかった「女性の労働力」  

コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)が示した、コロンビアのコーヒー栽培における典型的な男女参画例の図があります。 この図には、力仕事の多い農園整備や除草、妊婦への危険が高い農薬散布は男性が受け持ち、それ以外の、会計、収穫、労働者の世話や管理などには、女性と男性の双方が関わっていることが示されています。また、コーヒーの品質にとても大きな影響を与える精選作業は女性が受け持つ一方で、その品質が反映される価格交渉や販売の多くを男性が受け持っていることも示されています。 

『コーヒーから読み解くSDGs』より
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コーヒー栽培農家と言っても、コーヒーだけを育てていれば生活できるわけではありません。その多くは、家庭で消費するための家庭菜園や養鶏も行い、また料理や掃除などの家事全般や子育てもしなければなりません。 そしてこれらを一手に引き受けているのは女性です。しかも、一家の面倒を見る家事には、1年中休みがありません。 

また、女性の労働時間はとても長いにもかかわらず、コーヒーの価格交渉や販売には関わらないため、収入へのアクセスは男性に限られています。自分の労働対価としての収入がなければ、たとえ女性が家族の食料や衣類などのためにお金が必要であっても、男性からお金をもらうしかないことになります。女性の労働が無償労働という扱いを受け、生活に必要なお金ですら男性から貰わなければならないと、金銭的にも精神的にも男性に依存する関係は解消されず、女性自身も「自分は男性に依存しなければ生きられない存在なのだ」と認識してしまいがちです。 

このようなジェンダー配分の明らかな不均衡は世界各地で見られ、そして多くのコーヒー生産国には古くから根付く男尊女卑の文化や、女性と男性の役割に関する固定観念があります。 例えば、アフリカのウガンダでも、女性は農園で働いているにもかかわらず、コーヒーの販売で収入を得るのはほぼ男性だけに限られています。これは、ウガンダでは伝統的に女性に土地所有権が認められてこなかったことも大きな原因です。

ウガンダの生産者グループを対象に行われたある調査では、コーヒーは男性が所有権を持つ土地で穫れる作物なので、「男性の作物」だという考えが根強いことが、女性、男性の双方へのインタビューからわかっています。女性や子どもたちは、コーヒー農園で働いても、コーヒーの販売に関わらないため、自分たちのコーヒーの販売価格を知らないケースさえあったと言います。 

しかも、コーヒーの収穫期のピークにおける男性の1日の平均労働時間は8時間であるにもかかわらず、コーヒー農園での仕事に加えて家事を一手に引き受ける女性の労働時間の平均は、15時間にのぼりました。女性が男性からドメスティック・バイオレンスを受けたり、家計に困った女性が男性に隠れてこっそりコーヒーを売って収入を得るという事例も報告されています。 

女性を支える社会基盤の脆弱さは、女性の進出を妨げる直接的な要因になっていますが、仮にそのような点が改善されたとしても、社会での女性の役割についての固定観念が強いと、女性は無意識のうちに諦めてしまうこともあります。これは、途上国の女性に限った問題ではなく、日本で女性の管理職や、政界での活躍が極めて少ないのは、ジェンダーの平等が根本的に社会に浸透していないからとも言われます。