巨象・日立製作所の「1兆円買収」は、過去の大失敗の「二の舞」になる…のか? 現状と課題

加谷 珪一 プロフィール

グローバル市場は、分野の細分化と高度化が進んでおり、いわゆる「何でも屋」が通用するような時代ではなくなっている。昭和から平成初期までは、総花的な事業展開が許された牧歌的な時代であり、その感覚を引きずっているビジネスパーソンも多いが、今の市場環境はまったく異なる。つまり、高いリスクを取ってでも、選択と集中を実施しなければ生き残れないほど、競争環境が激化しているのだ。

 

グローバル人材の確保が必要

日立もこうした状況はよく理解しているはずであり、それ故に製造業のAI化に向けて「選択と集中」を進めてきた。今回の「選択と集中」は、大きな流れとしては間違っておらず、基本戦略としては正しい。

今回、日立が抱えたリスクというのは、基本戦略を間違う、あるいは大きな方向性を見誤るといったことではなく、買収案件を現実の収益につなげられるのかという戦術的リスクといってよい。その意味では、今回の買収は金額こそ大きいが、HDDの買収案件と比較すればリスクのコントロールはしやすいだろう。

だからといって、今回の買収によって日立がすぐに当該分野で成長軌道に乗れるのかというとそうではない。同社にとって最大の課題は海外の顧客基盤の薄さである。

日立全体としての海外比率はまだ5割しかなく、重点分野のひとつであるITシステムについては7割が国内向けとなっている。今回、買収したグローバルロジックは海外に多くの顧客を持っているが、あくまで同社が持つ付加価値はソフトウェアの技術力であって、営業力や顧客基盤そのものではない。

編集部からのお知らせ!

関連記事