巨象・日立製作所の「1兆円買収」は、過去の大失敗の「二の舞」になる…のか? 現状と課題

加谷 珪一 プロフィール

同社は2003年に約20億5000万ドルを投じて米IBMのHDD(ハードディスクドライブ)部門を買収した。同社にとって最大の買収案件だったが、同部門は5期連続の営業赤字に陥るなど苦戦が続き、結局は、2011年に米ウエスタン・デジタルに売却した。売却額は約43億ドルなので、見かけ上は利益が出たが、買収後の追加投資などを考えると、実質的には失敗と考えてよい。

前回の二の舞になるのではないかとの意見もあるだろうが、前回とは異なり、今回の「選択と集中」は、大きな方向性として間違っていない。

〔PHOTO〕iStock
 

「選択と集中」は誤りなのか

当時の日立は、今と同じように「選択と集中」を掲げており、2003年に発表した中期経営計画では、ストレージ(ハードディスクなど)、バイオメディカル、都市再生事業を注力事業としていた。IBMのHDD部門買収はその目玉案件とされ、メディアも「日立の英断」「日本の技術が世界へ」といった形で、日立の戦略を絶賛していた。

世論は日立の思い切った戦略に酔いしれていたが、一方で市場の一部からは買収を不安視する声が出ていたのも事実である。ハードディスクは、1990年代までは高い付加価値を持つ製品だったが、2000年代は高度IT化社会へのシフトが進み、パソコンやサーバーはコモディティ化すると言われていた。実際、市場はその通りに展開し、ハードディスクはただの消耗品になってしまった。

もともとHDDはIBMが開発したものであり、2003年当時も主要技術のほとんどはIBMが握っている状況だった。HDDのビジネスを創業した会社が売却を決断したということは、将来の収益見通しが下がったことと表裏一体である。つまり当時の日立の選択と集中は、残念ながら誤った見通しに基づくものだったと言わざるを得ない。

日立の失敗から、国内では「選択と集中」は誤った戦略であるとの認識が広がったが、それは日本だけで通用するガラパゴスな概念である。

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