私たちの誰もが思い込みにとらわれている

――生理を描写するシーンでは、日本のリプロダクティブヘルスの選択肢の欠如を感じました。生理を和らげたり止めたりする避妊注射や避妊インプラント、無税の生理用品、貧困層や学生のための無料の生理用品が他の多くの国で提供されているのに、日本にはありません。

川崎監督:日本は経済的に豊かな国のはずなのに、精神的には貧困。リプロダクティブヘルスにしろ、ジェンダー規範にしろ、女性に豊かな選択肢を提供しないのに、非常に多くを求めている気がします。「女は産む機械」「3人は産んでほしい」など、国や自治体のトップがそういうことを口に出してしまうレベルっておかしくないですか?

足立区のLGBTQ発言にしろ、森喜朗氏の発言にしろ、これまで何度も失言で叩かれているのに、同じことを繰り返す。権力の中枢にいる人たちが価値観をアップデートできないのなら、若い世代に交代してほしいと思います。

『Eggs 選ばれたい私たち』より

――同性愛者の葵が感じるマイクロアグレッション(小さな攻撃性。無意識の差別や偏見)も繊細に描かれていました。

川崎監督:男性のカラダで生まれたトランスジェンダーの女性が、女性トイレに入ることに反対する声がたびたび話題になりますよね。個人的には、「個室だからいいじゃん!」と思いますが、LGBTQは海外の映画祭ではひとつのジャンルになっているぐらいなのに、まだまだ一般社会には浸透していません。

映画で同性愛が描かれるときは、大体がラブストーリーだったり、家族との葛藤だったりするのですが、当事者とその友人の関係性が描かれることはこれまで、あまりありませんでした。純子と葵の友情関係からも、性的指向やジェンダーで壁を作ってしまう現象を映したかったんです。

嬉しいことに、この映画を観た様々な国の女性、そして男性からも「これは自分の物語だ」と共感してもらえました。性別、国籍、性的指向、世代……私たちの誰もが様々な「思い込み」にとらわれていて、とらわれていること自体に気づけないこともあります。これは普遍的な人間の課題かもしれません。そこに気づけるように私もなりたいですね。

『Eggs 選ばれたい私たち』は2021年4月2日(金)よりテアトル新宿にて公開!以降全国順次
(C)「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会