特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」公式Twitterより

『BEASTARS』から考える「鳥獣戯画」の世界

カワイイと不気味さが同居する不思議
※この記事には『BEASTARS』の内容に関する記述があります。未読の方はご注意下さい。

日本の古美術の中では、「鳥獣戯画」は比較的よく知られた作品であろう。この作品は、漫画の源流であると言われることも多い。

特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」公式Twitterより
 

たしかに「鳥獣戯画」でもっとも著名な甲巻は、ウサギやカエルが人間のような振る舞いをしていてファンタジックであるし、白地に墨の線だけで描くスタイルも漫画のようだ。ネコ耳の美少女に限らず、動物を擬人化することは漫画表現の有力な手法であるが、見た目に動物的な要素が色濃く残っているという意味では、2018年にマンガ大賞を受賞した『BEASTARS』 などが、とりわけよく似ているかもしれない。

しかし、両者はまったく同じというわけではない。例えば、「鳥獣戯画」にはコマ割や吹き出しなどは存在していない。動物が人間のように振る舞っていても、「鳥獣戯画」と『BEASTARS』は似ているようで似ていない、つかず離れずの厄介な関係なのである。それは『BEASTARS』におけるレゴシとハルの恋愛のようにもどかしい。

背景にある「近代的な人間観」

『BEASTARS』では、共存する肉食動物と草食動物の対抗関係が作品世界の軸をなしている。肉食が禁じられた世界で両者の間に生じる、喰うか喰われるかの命をかけた緊張感が、その世界に不穏な空気を作りだす。

動物たちは、肉食と草食の対立を乗り越えたかのようにおだやかに生活しているが、抑圧された肉食動物の本能は、非合法に草食動物の肉を販売する「裏市」という形で、社会の表面からは隠されつつも継続している。決して両者の対立が解消されたわけではないのである。

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