「恐竜のおかげで人類が繁栄した」という意外な事実をご存じですか?

「絶滅と進化」の切っても切れない関係
小林 武彦 プロフィール

一方、目の色覚に関する遺伝子は1つ増えました。夜行性の時代には2色色覚(赤と青) の2つの遺伝子のみでしたが、赤を認識する遺伝子(L遺伝子)が遺伝子増幅(同じ遺伝子が2回複製される現象)によって2つに増え、増えた1つが変異を起こして全体の4%が変化し、緑の波長に反応する遺伝子になりました。

おかげで色覚が向上し、果実がより見つけやすくなったと想像されます。実際には、遺伝子増幅も変異も、もっといろんな変化がありましたが、このような緑色を認識する遺伝子が残ってきたのです。このように、身体の変化は、まずDNAに起こるのです。

絶滅によって支えられているもの

このような変化と選択による進化は、後から現代の研究者が推察して考えたストーリーです。実際にはそんなに簡単ではありません。最低でも数十万年、霊長類のご先祖様の小型哺乳類の世代交代にかかる時間を5年と仮定すると、数万世代の時間をかけて、その間に多くの個体が生まれて死んで、やっと成し遂げた変化なのです。

 

より細かな色覚を手に入れた昼行性の霊長類の一派は、その後、分かれ道に差し掛かります。一つは、そのまま樹上で生活し森の王者を目指す道。もう一つは、地上に下りる道です。この選択には、地理的な条件が大きく影響したはずです。

霊長類はアフリカで誕生したと考えられていますが、大きく2つのグループに分かれて進化しました。当時、アフリカと南アメリカは今よりも接近していました。現在のアマゾン流域に移り棲んだ霊長類のグループは、密林の中で進化しましたが、結果的には木の上という隔離された空間で、大きな変化はありませんでした。

これに対して、アフリカに残った霊長類は、地球規模の気候の変動、砂漠の拡大により森林が減少し、木から下りざるを得ない状況に追い込まれました。しかしそれは簡単なことではありません。地上には肉食獣がうようよしており、木から下りたサルはいい標的となってしまいます。絶滅してもおかしくないレベルの危機だったことでしょう。

アフリカの風景(photo by iStock)

しかし幸運なことに、ここでも多様性のおかげで、逃げ足が速いか隠れるのがうまい「賢いサル」が、多少なりとも生き残ることができました。この「油断したら襲われる状態」が数百万年続き、生き残った個体がヒトへと進化したのです。

このように、結果から過去のストーリーをたどると綺麗に聞こえますが、実際には多様性の中での大多数の個体の死があって徐々に変化してきました。別の言い方をすれば、多様な個体が多様な集団を作り、多くが絶滅する中でたまたま生き延びた集団があったというわけです。

そしてその環境から、また新たな生物の多様性が生まれていきます。この「多様化‒絶滅」の関係、言い換えれば「変化‒選択」のサイクルのおかげで、私たちも含めた現存の生き物が結果的に誕生し、存在しているのです。

これはつまり、多様な生き物が存在し、それらが常に新しいものと入れ替わる「ターンオーバー」に次ぐ、本書の2つ目のポイントである「進化が生き物を作った」ということですね。

生物を作り上げた進化は、実は〈絶滅=死〉によってもたらされたものです

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