「恐竜のおかげで人類が繁栄した」という意外な事実をご存じですか?

「絶滅と進化」の切っても切れない関係
小林 武彦 プロフィール

絶滅による新たなステージの幕開け

生き延びたのは小型の生物です。彼らは恐竜の死体などからも栄養を得て、体が小さい利点を生かし、穴の中などで寒さ暑さをしのいでいました。その中には私たちの祖先である小型の哺乳類もいました。彼らに新たな進化のチャンスが訪れ、新生代、つまり現代の幕が開きました

専門用語で「適応放散」と言いますが、恐竜などに占められていた生活場所(ニッチ)に、別の生き物が時間をかけて適応・進化してその場所で生活できるようになります。例えば爬虫類でもトカゲのような小型のものは、食料不足に比較的強く、さらに小型化して生き残りました。

また中生代白亜紀に爬虫類から進化した鳥類は、食料の探索能力が高かったため、やはり生き残りました。つまり小型の生き物は、大型の爬虫類がいなくなり、気候が安定したあとには逆に生きやすくなったのです。

恐竜の時代にはひっそり暮らしていた小さな哺乳動物も、気候の変化に比較的強く、生き残ることができました。さらに、恐竜という天敵がいなくなったことで、新天地で多様化・大型化が急速に進みました。

人類の祖先も、この頃に誕生したネズミに似た夜行性の生き物だったと考えられています。ただ、樹上生活をしていたので、枝に摑まるためにネズミよりは手が大きかったようです。

哺乳類は爆発的に増えたのち、やがてその中で競争が起こり、さらに適したものが生き残って増える「変化と選択」により、瞬く間に多種多様な哺乳動物が現れました。サルの仲間である霊長類も現れました。つまり、恐竜をはじめ多くの生き物が死んでくれたおかげで、次のステージ、哺乳類の時代へと移ることができたのです。絶滅による進化が、新しい生き物を作ったというわけです。

こうした流れから考えると、このときの大量絶滅は人類にとっては決して悪いことではなかったと考えられます。隕石様様ですね。

現在進行中の絶滅の時代も、同様に新しい地球環境に適応した新種が現れて、地球の新しい秩序ができ上がっていくのでしょう。

ただこれは数百万年もかかる変化で、私たちの子孫がそこにいるかどうかも、わかりません。絶滅した恐竜のように、そのときにはいないかもしれませんし、恐竜から進化した鳥が生き残ったように、主役から脇役に変化した「元人類」が別の生き物としてひっそりと生き残っているのかもしれません。そして何よりも、絶滅の連鎖が進行していく過程はかなり悲惨です。私達の子孫の行く末は心配です。

ヒトのご先祖は果物好きなネズミ?

過去の絶滅の話に戻ります。6650万年前の中生代までは隅っこに追いやられていた哺乳類ですが、恐竜が絶滅してくれたおかげで、食料と生きる空間を急速に拡大しました。中生代から新生代、そして現在までのヒトのご先祖様たちの盛衰を振り返って、今後の私たちの運命をもう少し詳しく予想してみましょう。

これから紹介するのは基本的に化石の研究での推定であり、諸説ありますが、ざっくりこんな感じで現代人が登場したと考えられています。

人類の遠い祖先? ツパイ(photo by iStock)

始まりは、現在も東南アジアなどに生息するツパイのようなネズミに似た小さな夜行性の哺乳類でした。特徴は、ネズミよりも体の割には脳と前足が大きいこと。虫や葉っぱを食べながら敵のいない木の上で生活していました。

樹木の上でもある程度大型化できましたが、恐竜がいなくなった新生代には、夜行性である必要がなくなり、変化して昼行性になりました。昼行性のほうが色鮮やかな果実を見つけやすく、さらに行動範囲を広げることもできたので、都合がよかった、つまりそういう性質をたまたま持ったものが選択されて子孫を多く残せたのです。

果実を豊富にとることができるようになり、この頃に霊長類の祖先は、体内でビタミンCを作る遺伝子を偶然失いました。果実からビタミンCを多量に摂取するようになり、体内で作る必要がなくなったので当時は特に問題はありませんでした。

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