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「恐竜のおかげで人類が繁栄した」という意外な事実をご存じですか?

「絶滅と進化」の切っても切れない関係
私たちはなぜ死ななければならないのか――この問いに一つの答えをもたらすのが、生物学の視点である。
前回の記事『人類必読!私たちが死ななくてはならない「2つの理由」とは?』では多様化の重要性を紹介したが、生物の死の理由を考える上で、もう一つ重要なことがある。それは「絶滅」だ。
一体なぜか。そもそも生物は、なぜ絶滅するのだろうか? 
生物学の視点から「私たちが死ぬ理由」を解説し、新しい死生観を提示する、生物学者・小林武彦氏による現代新書の最新刊『生物はなぜ死ぬのか』から、その一部をお届けする。

人類がこれまで経験したことのない事態

環境の悪化が引き起こす重大な問題として、「生物多様性の減少」という言葉を耳にされたことがある方は多いと思います。

ですが、生物の多様性が減少するとどうなるのか、あるいはどのくらいまで減少しても問題ないのか、ということについてはあまりよく知られていません。理由は簡単で、このような大量絶滅を私たち人類がこれまで経験したことがなく、研究者でさえも何が起こるかよくわからないからです。

しかし、「これから先はどうなるかわかりません」では、私たちの子孫に対しても、そして私たちを育んできた地球に対してもあまりにも無責任なので、できる限り想像力を働かせて考えてみましょう。

多様性の意義として、生物が他の生物の居場所を作り食料も供給することが挙げられます。さまざまな種が存在して生態系が複雑であればあるほど、ますますいろんな生物が生きられる、正のスパイラルがここでも働いています。そしてこのような複雑な生態系は、環境変動などに強いと考えられます。

たとえば、A種が絶滅したとしても、それと似た生活スタイル(専門用語で「ニッチ」と言います)を持つ生物が代わりをするので、大きな問題は起こりません。絶滅で生じるロス(喪失)が生態系に吸収されたわけです。健全な生態系のバッファー効果(緩衝作用)と言ってもいいかもしれません。

しかし、大量絶滅の場合は話がかなり違ってきます。たとえばヒトの活動の影響で生き物の10%が絶滅したとします。これは、IPBES(生態系の現状を科学的に評価する国際組織)の報告の数十年以内に起こりうる数値の上限です。これだけ多量に、しかも急激にいなくなると、似たようなニッチの生き物が抜けた穴を補うことがもはやできなくなります。

そうすると、それら絶滅した生き物に依存して生きていた生き物も絶滅するかもしれません。

さらに、それらに依存していた生き物も絶滅します。このようにドミノ倒し的に、あっという間に多くの生物が地球から消えてしまいます。すでにダメージを受けて種数が減少しているバッファー効果の弱い生態系では、ほんの数%がいなくなっただけでも、このドミノ倒しが起こると想像できます。

昆虫が減少すれば、植物も減少する(photo by iStock)

植物も然りです。植物の受粉に関わる昆虫がいなくなると、大打撃を受けます。動植物が減少すると、その死骸を栄養にして土の中に生きている分解者である微生物も減少します。

人類ももちろん例外ではありません。人類は「知恵」を使って生き延び、絶滅することはないかもしれませんが、深刻な食糧不足は避けられないでしょう。逆に「知恵」の使い方を間違うと、不足している食料を巡って戦争が起こるかもしれません。

そうしたら一巻の終わりですね。いずれにせよ、多様性の低下は悲惨なことになるのは間違いないようです。

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