カッコイイ大人たちからたくさんのことを学んだ

第一回目の書評が新聞に掲載されたとき、久世さんは、小泉さんの自宅まで、手書きで感想を書いたファックスを送ってくれた。

「それからも時々、『読んだよ』って。いつもそうやって見守ってくれましたね。たまには叱ってもくれましたし。私は、そういういい大人たちにいっぱい出会って、本当にいろんな扉を開けてもらった。ドラマや映画の世界にもいたし、読書の世界にも、ファッションの世界にも、音楽の世界にも、カッコいい大人がいて、そういう人のおうちに行って、本棚を見て、『これってどういう本?』『少し難しいかもしれないけど、持って帰って読んでみたら?』とか。そういうちょっとした刺激をいっぱいいただいたんです。

この番組をやることにしたのも、私の好奇心の扉を開いてくれた、そういう一人の大人でいたい思いがあるかもしれない。映画も本も音楽も、文化や芸術に分類されるものは、本当に、時間も何もかも飛び越えられる。100年前の文学を読んで、100年前の映画を見て、私たちは感動することができるでしょう? それってすごいことだなぁと思うんです」

撮影/山本倫子

新聞書評を担当していた時期は、文章の中に、解説ではなく、「自分の時間を書く」ことを心がけていた。

「他の書評担当の方に比べて、自分が圧倒的に本に対するデータが少ないことはわかっていたので。そのジャンルの本を100冊読んでいる人と、一冊しか読んだことのない私とでは、書けることが全く違う。もし、私にしか書けないことがあるとすれば、その本を読んだときの時間じゃないかって。むしろ情報が少ない人しか書けない文章を意識しました(笑)。本を、できるだけ自分に引き寄せていたっていうか。だからこの番組も、一冊の本を紹介することにならないようにしようと。その人の感覚とか、生活とか、ルーツとかを聞き出すことで、どんどん脱線していきたいなと思っています」