「書いた原稿をちゃんとボツにしてくれますか?」

独特のテンポと、絶妙なワードセンスで、しっかりとしたキョンキョン節を感じさせるエッセイを書いたり、「面白かった!」とコメントした本がベストセラーになったり。10年続けた頃には、すっかりアイドルを超えた「言葉」の信頼を得るポジションも確立していた小泉さんだが、30代の半ばで、今度は新聞の書評を担当することに。書評を書くということにプレッシャーはなかったのだろうか。

「もちろん、最初は『そんなのできるわけがない』って思いましたよ。でも、読売新聞の書評担当のデスクと私の間に、私の恩師の久世光彦さんという方が仲介で入ってくださったんです。それで断れなかった(笑)。最初に、久世さんと担当デスクとで一席設けてもらったときに、私はこう言ったんです。『私は文章を書くことに対しては自信がありません。例えば、私が書いた文章をボツにするとか、そういうことをちゃんとしてくれるんですか?』と。でも彼は、『いやいや、直しはするけどボツにはしません!』という。

今思えばそれは、『掲載できるところまでとことん直します』って意味だったと思うんですが、私はとにかく厳しく接してほしかったので、なぜか『ボツ』って言葉にこだわっていたんですね。それで、『ボツにできるのか?』『いえ、ボツにはしません!』って押し問答が続いて(笑)。これじゃ埒があかないと、途中で、『10分、散歩に行ってきます!』って言って私は店を出て、夜の街をプラーって歩いた。その間に久世さんが、『とにかく1回ボツにするって言え!そしたらあいつやるよ』ってアドバイスしたみたい。戻ったら彼が、『ボツにします』『じゃあやるよ』みたいな(笑)。一件落着でした」

撮影/山本倫子