「昔はよかったのに、最近は言うことも聞かないの」「うちの子はいつも積極性がなくて」「なんでこんなこともできないんだろう」――つい親から出てしまう、子どもへの否定の言葉。子どもを愛しているからだ、より成長してほしいからだという思いゆえかもしれないが、ともすると子どもたちの心に鋭利な刃物として刺さってしまう。ジャーナリストの島沢優子さんは、ご自身もそんな「否定の言葉」ばかりを口にしてしまう親だったという。島沢さんら母親たちを救ったのは「リフレミーング」。人気お笑い芸人「ぺこぱ」のネタにも通底するこの手法、どんなものなのか。

島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもをのばす親の条件」今までの連載はこちら
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子どもを否定ばかりする親

「ぺこぱ」のファンだ。
『M-1グランプリ2019』で3位に輝いたお笑い芸人の松陰寺太勇とシュウペイ。ツッコミの松蔭寺が「運転手さん、新宿駅までお願いします」と言えば、シュウペイが「お客さん、新宿駅ってどこですか?」とボケる。そこで松蔭寺は首を上下に振ってからどや顔でつぶやく。
「いや、知らないなら教えてあげよう。知識は水だ。独占してはいけない」

あらゆる事を否定しない「全肯定ツッコミ」を生み出したぺこぱをテレビで見かけるたびに、以前取材したひとりの女性を思い出す。彼女は有名私大に入学した長男に不満を抱えていた。

夫の転勤で移住した米国で生まれ育ったため、英語に堪能な帰国子女。部活に打ち込んでいた高校までは自慢の息子だったが「大学に入った途端に母子のケンカが絶えなくなった」と言う。
「長男はサークルには入らず、バイトもしない。いろんなことができるし思いっきり遊べる大学生なのに、夫より帰宅が早い。大学から帰ると、ソファーに寝そべってスマホいじるか、ゲームしてるだけ。外に出て行かないから友達もいないし、当然彼女もいない。まったくイケてない」

ずっと家のソファで寝転びスマホかゲーム。ちょっとは外に行けば?と言いたくなってしまった(写真の人物は本文とは関係ありません)Photo by iStock

母が抱く理想の息子像に、程遠かったようだ。女性の愚痴はまだ続く。
「コミュニケーション能力が低い。生きる力が弱そう。自分で意欲的にガツガツ行かない。大学なんて、もっと下のレベルで良かったのに」

良かれと思い、こうしたら、ああしたらとアドバイスするという。
友達ができないのなら、サークルに入ったら?
将来が見えないんだったら、何か資格とったら?

「こっちはせっかくいろいろ考えているのに、黙ったまま不機嫌そうな顔で自分の部屋に行っちゃう」
息子さんが不機嫌になるのは、アドバイスの前提に「友達ができない」「将来が見えない」と自分への否定があるからだろう。あれこれ言わずに好きにさせては?と言ってはみたが、「もう、目の前から消えてほしい」という。他人から見れば「良い大学に入った優秀な息子さん」に映るだろうが、母の目には息子の短所しか入らないようだった。

都内にある学習塾で塾長を務める男性は、塾生の母親が「私も夫も勉強ができたのに、この子がどうしてできないのか不思議でたまらない」と漏らすのを聞いたことがある。夫婦とも名門大学を卒業していた。
「こんなふうに、わが子が自分たちと違うことを受け止められない親御さんは少なくありません。ただ、高学歴の親だけが子どもを追い詰めるわけではないです。勉強でも、スポーツでも、頑張れば何でもできると思ってるんですね。結果がついてこないと『頑張りが足らないからだ』と責める。家では、虐待まではいかなくても、結構言葉で追い詰めてるようです」

親に否定され続けている子は、塾が終わってもなかなか帰りたがらない――そんな話を聴いて切なくなった。