そうは言っても、菅氏は日米首脳会談を通じて「外交成果」を掌中に収める可能性が高い。前任首相の安倍晋三氏に比べて外交・安保政策は不得手だとの見方が永田町や霞が関では支配的だった。政治の世界には「ツキも実力のうち」という言葉がある。
取り敢えずの「成果」、その一つとして日本主導で日米豪印(クアッド)連携によるインド製コロナワクチン1億本(6億回接種分・10億ドル相当)を東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国に供与することが共同文書に盛り込まれるはずだ。
ASEANの経済大国であるベトナムは新型コロナウイルス感染拡大の初期段階で水際防疫に成功したが、皮肉にもワクチン接種態勢構築に出遅れたため、このワクチン提供は大歓迎である。
最後に訪米日程の延期の理由であるが、ワシントン情報によると、日米共同文書に盛り込まれる気候変動対策の「数値目標」についてジョン・ケリー大統領特使(気候変動問題担当)がハードルを上げることを主張、その政権内調整に時間を要するという米側の事情だったようだ。いずれにしても筆者は、菅氏が18日午後、羽田国際空港で政府専用機のタラップから降り立った際、満面の笑みを浮かべた表情なかどうか、注目している。