「もう十分やっています」という企業

なぜこのすれ違いはずっと埋まらないのだろう。

2003年12月にAERAでこんな記事を書いたことがある。
「主要95社調査 女性登用で会社はのびる〜『女性にやさしい』より『正当に評価』」。大企業を中心に両立支援制度や、女性管理職比率・採用比率などを調査すると同時に、女性支援で先進的と言われる企業で実際働く女性たちも取材した。彼女たちは制度の恩恵も受けていて感謝もしていたが、やりがいや仕事を続けるモチベーションに大きく関係しているのは「正当な評価」だとわかった。今から15年以上も前の話だ。
すでにその頃から、働き続けるためのベースの制度は必要だが、正当で公平な評価やキャリア支援を女性たちは望んでいたのだ。

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そしてこの間、その公平な競争環境の整備やキャリア支援は果たして進んでいるだろうか。

先日発表されたジェンダーギャップ指数の最新の数字では、G7諸国で相変わらず最下位で、156カ国中120位と低迷したまま。第2次安倍政権鳴り物入りの「女性活躍」政策、その中心的な目標だった2020年までに指導的立場における女性比率を30%に引き上げる「2030」もあっさりと先送られた。2019年の企業の平均女性管理職比率は7.7%。どれだけの企業が本気で女性管理職を増やそうとしたのだろうか。

一向に増えない女性管理職、女性役員の数字を見ると、むしろ両立支援制度は女性たちをマミートラックに追いやり、男性には安心感を与えたのではないかと思う。

女性が登用されるということは、別の視点から見れば、男性たちのポジションを奪う、つまり出世機会が減る、ということだ。なれると思っていた管理職や役員になれないとなれば、心中穏やかでない人もいるだろう。「女性にやさしい」と思われていた制度は、実は君たちはそっちの世界(マミートラック)で頑張ってね、決して僕らの世界に横入りしないでね、となり、警戒する人たちは好都合だったかもしれない。

子どもの世話をしながらいないかのように仕事をすることはできない。しかしそうでなければ出世できないなら出世を諦める。その方が「便利」だったのではないか――Photo by iStock

企業取材をしていると、「浜田さん、いつまで女性活躍続ければいいんですか?」と言われることがある。もううちは十分やってますと。そういう企業に限って、女性管理職比率が1割程度。多様性という言葉で巧妙に議論をすり替えられることもあった。ダイバーシティ(多様性)が大事なので、女性だけを優遇するわけにはいかないんです、と。

2月の森発言を受けて、上野千鶴子さんにインタビューした際、こんな指摘をされた。
私は企業の方たちとお話する中で、SDGsの17個のゴールで、ジェンダー平等の優先順位が低いという印象を持っています。日本では『男女平等』って言いたくないから、『ダイバーシティ』って言葉に置き換えてごまかしているんじゃないかとしばしば思います」(ビジネスインサイダー「森騒動とは何だったのか。上野千鶴子氏が語る「男性もイエローカードを出すべきだ」より)

両立支援制度だけバッチリ整えて、男性のポジションを脅かさない限定的「女性活躍」。それが実態なのではないだろうか。