2021.04.06
# 政治政策

盛り上がる「ベーシック・インカム」政策、その「大きな落とし穴」に気づいていますか?

井手 英策, 関 良基, 佐々木 実 プロフィール

井手 環境税のような政策課税は社会的に望ましくない行為を減らすことが目的なので、究極的には「税収0円」がベストな状態。人間の暮らしの基礎を支えるべき財政が減っていく財源に頼っていいかという問題は原理的にはあると思います。もっとも、ヨーロッパで議論されているような「スマート付加価値税」、つまりお金持ちが買うような高額な嗜好品に高い税率をかける消費税は考えられますから、環境への負荷の大きい消費に税をかけるという発想はありだと思います。

 

「格差はいけない」とはどういう意味か

佐々木 井手先生はコロナ禍が起きる前からベーシック・サービスを提唱されていますよね。著作や発言からは切迫感が伝わってくる。「すぐにでも政策に反映させたい」という思いが強いから、給付するサービスを戦略的に限定し、消費税増税をあえて前面に出しているのではという印象を持っているのですが。

井手 僕は貧乏な家に育って、母がスナックをやりながら大学まで出してもらいました。大学3年生のとき、授業料免除申請が通らなくて、母に謝ったことがある。あの時、「消費税は上がるけど、そのかわり大学はタダになるよ」と言われていたら、母は泣いて喜んだはず。そういう体験が切迫感につながっているのだろうとおもいます。お金持ちにまず税を、というのは、本当にしんどい人の目線じゃない。

ベーシック・サービスが実現して、子どもの学費や医療費、介護費のような将来への不安がなくなれば、世帯年収が300万円でも安心して暮らすことができるんです。こうした政策を訴えるのは、結局、「格差がいけない」という言葉の「意味」を考えるからなんです。

新古典派経済学では失業者の労働の価値はゼロです。宇沢先生はそこにメスを入れ、「なぜその人は失業したのか、その意味を考えなさい」と問いました。そこに宇沢経済学の本質があると思う。

格差がダメだというとき、では、なぜダメなのか、その意味を考えないと。格差は必ず発生しますよ。結局、受け入れられる格差とダメな格差の線引きが重要。「サービスにアクセスできない人たちは生きていけない」、そんな人たちを生む格差がダメな格差の本質です。だからこそ、ベーシック・サービスを提唱しているのです。

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