トランプ現象に学ぶ、世界を単純化する「マンガ的思考」の罠

トランプ主義の悪夢【後篇】
川崎 大助 プロフィール

ウイルスは蔓延したままかもしれない

「真なる悪夢」は、トランプ退任後にこそ現実化し始めている、のかもしれない。いまだ記憶も生々しい、あの惨劇、今年1月6日の米議事堂乱入事件こそが「終わりの始まり」だったのかもしれない。あそこから、現在の「差別の大波」まで、一直線だ。

1月6日、あのG.W.ブッシュ元大統領をして「バナナ共和国みたいだ」と蔑称つきで非難せしめたほどの狂態が、アメリカの政治中枢において発生した。意味不明な、出来の悪いマンガのような陰謀論、あるいは愚にもつかない妄想に取り憑かれた暴徒が、米国民主主義の象徴とも呼ぶべき場所を、土足で蹂躙した。

かつて当選時に「Idiot(大馬鹿者)」と罵倒されたブッシュが、まるで常識人のように見えてくるほどの異常事態が、あれだった。

弾劾裁判でトランプは有罪を逃れたものの、誰がどう見ても、あの事態を生じさせたのは「彼とその支持者たち」にほかならない。それらの者のあいだに蔓延した、妄想ゆえの地獄絵図だった。手前勝手な欲望と、虚妄に満ちた、だから「歪みに歪んだ」世界認識の上に立った、決して「実行してはならない」蛮行だった。

それは逆ヴァージョンの「裸の王様」だった、とでも言おうか。きちんと服を着ている、つまり裸じゃない王様を指して、裸だ裸だと言う扇動者(トランプ)がいて、感化された群衆限定で「本当に裸に見えてしまう」珍現象が起こって……あそこまでの事態になった。

そして、ごく普通に判断して、なんらかの形で「トランプ・ウイルス」に感染した人々は、アメリカ人の半分近くもいた。

地球規模で見ても「かなりの比率」で、いるのだろう。トランプや「トランプに似た人物」に、心惹かれる因子を持つ人は、とても多いのだろう。日本にいるそれが「Jアノン」と呼ばれることは、国際的にも有名となった(そして、笑われている)。

さらに暗い予測を言おう。トランプ本人が世を去ったあとも、この「病気」は治らないかもしれない。ウイルスは蔓延したままかもしれない。前述のMCUの概念や、コミックブックの世界観は「会社ごと」に共通のもので束ねられている。

この考えかたの元祖は、言うまでもなくウォルト・ディズニーとその大帝国だ。ミッキー・マウスや、ドナルド・ダックや、そのほか無数の妖精やプリンセスたちがいつまでも楽しく暮らす「夢の国」は、スクリーンを飛び出して、地上に「それらしき」テーマ・パークとして現出した。

それはどんどん拡大していって、さらには、世界中にフランチャイズ網を広げていった……これらのほとんどは「ディズニー本人が世を去ってから」実現されたことだ。あたかも、イエス・キリストが地上を離れてから、最初期のキリスト教が成立したときのように。

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