本気でGAFA解体へ…バイデン政権「反独占最強布陣」とその思想

「ネットの中立性」は実現できるか
中岡 望 プロフィール

独禁政策の中核・連邦取引委員会の人事

FTCには5名の委員がいるが、バイデン大統領はカーン教授に加え、もう1人の委員を指名する予定である。実現すれば、5名の委員のうち3名が民主党系委員になる。そうなればFTCの裁定に際して、バイデン大統領の意向が直接反映することになる。

FTCのレベッカ・スローター委員長代行もFTC機能強化を支持している。ただ共和党系のクリスティン・ウィルソン委員とノーア・フィリップス委員はFacebookのInstagramやWhatsAppの分割には反対の立場を取っている。

カーン教授がFTCの委員に就任すればFTCは劇的に変わると予想される。FTCはFacebookの分割を求める訴訟を起こしており、当然、カーン教授が訴訟の指揮を執ることになるだろう。将来予想されるAmazonに対する訴訟も、カーン教授主導のもとに行われるのは間違いない。

カーン教授は2017年に『Yale Law Journal』に「アマゾンの反トラストの逆説(Amazon’s Antitrust Paradox)」という論文を寄稿し、一躍注目されるようになった学者である。その論文の中で「Amazonの価格設定は反トラスト法違反」であると断定。さらに「Amazonの企業構造と行動には反競争的な懸念がある。しかし同社は反トラスト法の調査を逃れてきた」と指摘している。

同教授は“ヒップスター・アンチトラスト(最先端を行く反独占派)”と呼ばれるほど、独占企業に対して厳しい姿勢を取っている。価格に焦点を当てる伝統的な独禁問題の専門家とは違い、カーン教授やウー教授は市場独占に焦点を当て、積極的に反トラスト法を運用することを主張している。

カーン教授は下院司法委員会反トラスト小委員会の法務スタッフとして16ヵ月をかけGoogle、Amazon、Facebook, Appleなどビッグ・テック企業の反競争的行為に関すく調査を行い、450ページに及ぶ長大な調査報告をまとめ、昨年、小委員会に提出している。

この報告を受け、民主党はFTCなどの独占禁止法を担当する政府部門を強化するために新しい独占禁止法制定する必要性を主張している。さらにFTCの権限を強化し、調査能力を高め、ビッグ・テック企業を規制するための新法を年内に提案することも計画している。

司法省の足並みを揃える

ビック・テック規制の動きはカーン指名に留まらない。既に上院の承認を得ているメリック・ガーランド司法長官も、ビッグ・テック企業に批判的な人物である。司法省は既にGoogleを相手に訴訟を起こしている。ガーランド司法長官の就任で、その傾向はさらに強まる可能性がある。

バイデン大統領がガーランド司法長官を指名したとき、独禁政策の専門家は、同氏を指名した目的はビッグ・テック企業解体を目指したものであると指摘していた。

 

バイデン大統領は司法省の反トラスト部の責任者をまだ指名していないが、元FCCの(連邦通信委員会)法務部長のジョン・サレットが候補に挙がっている。同氏は通信事業の競争促進派でもある。このポストに誰が就くかによって、司法省の動きが決まってくるだろう。

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