2021.04.06
# 政治政策

日本には「ベーシック・インカム」より「ベーシック・サービス」政策が必要かもしれない

井手 英策, 佐々木 実, 関 良基 プロフィール

 じつは今から50年ほども前、宇沢先生は『自動車の社会的費用』(岩波新書・1974年)のなかで、すでにフリードマン型の現金給付、佐々木さん言うところの竹中=フリードマン型BIを批判していたんですよ。

 

市場化を徹底してすべての公共サービスを民営化したうえで、最低所得に満たず生活できない人たちには現金を給付するのが、フリードマンの「負の所得税」の考えです。宇沢先生は非常に批判的でした。

なぜかというと、フリードマンの考え方を推し進めると、インフレによる社会的不安定性を招く原因になるからです。水や食料、教育、医療など生活に必要な財やサービスは「需要の価格弾力性が低い」という特徴があります。たとえば、病気になれば治療費が高くても治療は受けなければなりません。水や食料なども多少値段が高くても生きていくために買わざるを得ないから、生活に必要な財やサービスは価格が高騰しやすい。

宇沢先生が懸念していたことが、今世紀になってから広範に起きています。世界中で水道の民営化が進んだ結果、水道料金の値上がりがひどくなり、私が昔住んでいたフィリピンのマニラなどでは民営化で料金が一気に5倍になるということもありました。
このように生活必需品の高騰が起これば、定額を給付するベーシック・インカムはセーフティネットとして機能しません。低所得者はいずれ生活できなくなりますから。

宇沢先生の理論的な考察によると、給付額を増やしてもさらに必需品が値上がりして、インフレのスパイラルは止まらなくなる。だからこそ、フリードマン型の現金給付を批判して、生活必需性の高い財やサービスは民営化せず、社会的共通資本として公的に管理して価格を抑え、誰もがアクセスできるようにすべきと主張したわけです。

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