2021.04.06
# 政治政策

日本には「ベーシック・インカム」より「ベーシック・サービス」政策が必要かもしれない

井手 英策, 佐々木 実, 関 良基 プロフィール

 宇沢先生は、すべての社会的共通資本を無償で提供すべきと言っていたわけでもありません。たとえば、公共交通機関の運賃や公営住宅の家賃を安くしたり、水道事業にしても民営化ではなく、政府が補填することで公営を維持しながら料金を安くするなどして、社会的共通資本とみなされるサービスを幅広く安価に提供するやり方もかんがえられるでしょう。

2005年に宇沢先生といっしょにドイツを訪れ、シュタットベルケという公営企業を視察したことがありました。水道、電気、ガス、エネルギーなどをすべて提供する公社です。再生エネルギー事業で利益を上げ、その収益でほかの事業の赤字を補填したりするビジネスモデルで、要するに、個別事業ごとの独立採算ではなく、事業すべてを社会的共通資本とみなして総合的な観点から経営されている。いまドイツでは、自治体ごとに設立されたシュタットベルケが伸びています。

視察したとき、宇沢先生はとても感動された様子で、ドイツとくらべると日本は地獄だね、とおっしゃっていました。宇沢先生は、完全無償化とは主張していませんでした。シュタットベルケのようなやり方なども参考にして、より広い範囲の社会的共通資本を安く安定的に提供していく方向もあるのではないでしょうか。

〔PHOTO〕iStock
 

井手 水や食料などを含めたすべての社会的共通資本の負担を軽減させていくのは、ひとつの方向性としてありえます。フランスやスウェーデンのような「大きな政府」を目指すならできるでしょうから、国民の議論を経て、日本の社会的共通資本をそう定義するのであれば、それでいいとおもいます。シュタットベルケもいい方法なんですが、日本の風土になじむか、という問題はありますね。

僕自身は「大きな政府」にまで踏み込むのではなく、まず一歩手前で、OECDの平均的な租税負担率で実現できるところにゴールを置いています。そうすると、無償化するサービスは当然限定されます。つけくわえれば、財つまりモノを全国民に提供するのは社会主義の発想ですよね。僕は財ではなくサービスに限定することで、社会主義とは別のゴールを設定しています。

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