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日本には「ベーシック・インカム」より「ベーシック・サービス」政策が必要かもしれない

コロナ禍で経済的な困窮が目立つなか「ベーシック・インカム」導入に関する議論が盛んになっている。しかし、このラディカルな政策には落とし穴があるのではないか。さらに、じつは「ベーシック・インカム」ではなく「ベーシック・サービス」のほうが効果的に人々を救うことができるのではないか——経済をめぐる一大トピックを、慶應義塾大学教授の井手英策氏、拓殖大学教授の関良基氏、ジャーナリストの佐々木実氏が語った。

盛り上がるベーシック・インカムの議論

佐々木 コロナ禍で困窮世帯が増え、経済的な格差はより一層広がっています。今秋にはデジタル庁が創設されますが、ポスト・コロナを展望するうえでは、劇的に進むデジタル化、AI化の影響も見逃せません。将来消滅する仕事のリストがメディアで報じられたりもしていますが、社会のセーフティネットをどう再構築するかが差し迫った課題となっています。

そんななか、「ベーシック・インカム」導入の議論がにわかに起きました。コロナ対策でひとり10万円が給付されましたが、こうした形のすべての人への現金給付を恒久化する制度がベーシック・インカムです。意外なことに火付け役は、菅義偉首相のブレインでもある竹中平蔵氏でした。

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のちほどのべるように、彼の案は福祉制度全体の抜本的見直しが条件で私は懸念をもっているのですが、一方で、現金給付政策とは異なり、生きていくうえで必要不可欠なサービスを無償化しようという考え方があります。医療や教育、介護などのサービスを無償化する「ベーシック・サービス」という政策を提唱しているのが財政学者の井手英策教授です。

「現金の給付」か「サービスの無償給付」か。対照的な制度が浮上しているわけですが、じつは、これは市場経済のとらえ方の違いでもあり、引いては目指す社会の違いにもなってきます。「ベーシック・サービス」に私が注目するのは、その政策理念が宇沢弘文(1928‐2014)の提唱した「社会的共通資本」に通じるからでもあります。そこで、宇沢教授の教えを受けた関良基教授にも参加いただき議論したいのですが、まずは井手先生から「ベーシック・サービス」について解説していただけますか。

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