ジブリのハウル、“超美形な王子様”だけど「ポンコツ」という不思議な魅力

パズーやアシタカとは決定的に違う
鷲谷 花 プロフィール

一方、本人いわく「美しかったことなんてない」映画版のソフィーは、原作版の彼女に備わっていた外見の美しさや、帽子づくりや魔法の特別な才能を、特に持ちあわせてはいないらしい。映画版のソフィーは、観客から見える限りではこれといって特別な資質をもたず、しかも呪いによって若さを奪われた状態で、人並み程度の家事能力だけを頼みに奔走し、一度は失われた自分のアイデンティティと居場所を作り直してゆく。

それに対して、ハウルは、ソフィーが自主的に活動する機会を奪わないどころか、むしろ彼女の助けを積極的に必要とする「ポンコツ」ぶりを発揮しはじめる。

ソフィーが最初にハウルの城に入り込んだ際に、片手で卵を次々に割って手際よくベーコンエッグを料理できるところを見せたハウルだが、一方で洗い物と掃除についてはまったく無能らしいことが判明する。ハウルの家事能力が極端にアンバランスであるため、ソフィーは城で掃除と洗い物に大いに精を出すことになる。

城の中を掃除するソフィー(スタジオジブリ公式サイトより)
 

家事に限らず、ソフィーと関わり合う中で、ハウルは極端なメンタルの弱さや、外界の脅威におびえる臆病さを見せ、ついにはソフィーの方がハウルを守るために外の社会に出ていき、王宮の強大な権力者である彼の師匠サリマンと直接対決し、交渉を行う。かくして、冒頭の「空中散歩」の場面で示唆された「守るヒーロー」と「守られるヒロイン」の関係は逆転し、流動化していく。

ハウルの師匠で王室付き魔法使いのサリマン(スタジオジブリ公式サイトより)

映画全編を通じて、ハウルは、「万能の魔法使い」から「メンタルの弱い引きこもり」へ、さらに「家族を守るために闘う家長」から、「救いを待つ可憐な子ども」へとめまぐるしく変転してゆき、それと同期するように、不可解な出来事の数々が、生起しては連鎖する。

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