ジブリのハウル、“超美形な王子様”だけど「ポンコツ」という不思議な魅力

パズーやアシタカとは決定的に違う
鷲谷 花 プロフィール

この出会いの「空中散歩」以来、ハウルは、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの原作小説の「惚れっぽい浮気者」という設定からも離れ、ソフィーに一筋に尽くす。指輪に新居に花屋に秘密のお花畑と、まめなプレゼントを欠かさず、クライマックスには「守りたいものができた、君だ」という殺し文句を残して、ソフィーを守るための戦いに飛び出してゆく。ハウルは、虐げられた乙女をお城に連れてゆき、望むすべてを与え、外敵から守ってくれる、「完璧な王子様」であるかに見える。

しかし、唐突に降って湧いてきた「王子様」に、ソフィーは自分の人生の問題の解決をゆだねようとはしない。荒地の魔女にかけられた呪いによって、18歳の乙女から90歳の老婆に変えられてしまったソフィーは、荒地をさまよい、ハウルの動く城にたどりついた後に、あくまでも自分自身の力で問題を解決しようと動き回る。

ハウルの城へのソフィーの入居は、城の動力源たる火の悪魔カルシファーとの「取引」にはじまり、城の主人ハウルとの

「あたしゃこの城の新しい掃除婦だよ」

「誰が決めたの」

「自分で決めたのさ」

というやりとりをもって完了する。

火の悪魔カルシファー(スタジオジブリ公式サイトより)
 

つまり、ソフィーは、良い魔法使い兼王子様としてのハウルに受動的に救い出され、城へと迎え入れられるのではない。能動的にハウルの城へと上がり込み、交渉して自分にとって望ましい労働契約を結んで城での生活を開始する。

愛すべき「ポンコツ」ぶり

原作小説のソフィーは、「きれいな娘」「かわいらしい娘」で、「帽子や洋服(を作ること)にかけちゃ天才」と評価されていた。しかし、おとぎ話では決まって意地悪で無能な役回りをあてがわれる「長女」に生まれたしがらみもあり、周囲も本人もソフィーの特別に優れた資質を適切に評価、活用できないうちに、呪いで老婆に変えられ、自己実現の機会からますます遠ざけられてしまう。そこに、原作のソフィーの受難はある。

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