約13年間のOL生活からフリーライターに転身、「どこでも働ける自由」を手に入れ、2020年からデンマーク・フィンランドを拠点に生活する小林香織さんの連載。今回は、小林さんが現地で出会ったアイスホッケー選手の杵渕周真(きねぶち・しゅうま)さんに「海外アスリートのリアルな生活事情」をインタビューした。

2019年のアイスホッケー世界選手権で優勝を勝ち取ったフィンランドは、現在世界ランキング3位。スケートリンクの数も日本に比べて圧倒的に多い。その3部リーグに所属し、日本人選手として現地で出場試合数最多を誇る杵渕さんだが、彼の年俸はおよそ12万円。大学生として学業と二足のわらじを履きながら、日々練習に励む。

圧倒的に白人選手が多いヨーロッパの地で、アジア人としてプレーする苦労も少なくないという。異国で奮闘する杵渕さんに、海外アスリートに立ちはだかる障壁ついて聞いた。

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引退後の未来を見据えて、文武両道を選んだ

日本人の母、黒人とカリビアン系の混血アメリカ人の父を持つ杵渕さんは、幼少期をロサンゼルスで過ごし、6歳のとき東京に移り住んだ。アイスホッケーを始めたのは6歳の頃で、ガンダムのような防具を付けたゴールキーパーに憧れたと話す。

「たまたま近所にスケートリンクがあって、始めてみたらそのおもしろさに一気にハマってしまいました。氷上という特殊な環境で、他のどの球技よりもスピードが速い。ファンの人たちの声援が身近に聞こえる屋内競技の環境も刺激があり、アイスホッケーならではの魅力がたくさんあるなと感じています。ゴールキーパーを経て、今はディフェンスのポジションを担っています」

アイスホッケー選手、大学生、カフェ店員(アルバイト)、ユーチューバーと多彩な顔を持つ杵渕さん 写真/杵渕さん提供

幼い頃からチームに所属してプレーしてきた杵渕さんには、当然「プロとして第一線で活躍したい」との情熱があるが、一方でキャリアに対して冷静な考えも併せ持つ。

「アスリートはどんなに長くても40代半ばまでが限界で、その後の人生のほうが長いと考えたときに、競技スキルしか持っていないのはリスクだと思いました。長期視点でのキャリア形成を見据えて、高校はスポーツ推薦ではなく学業にも専念できる学校を選び、大学ではビジネスITを専攻しています」

杵渕さんは東京の中学、北海道の高校に進学し、2014年、高校2年生のときに、フィンランドの高校に留学した。LAで幼少期を過ごしたことやアメリカ人とのハーフという背景もあってか、ずっと留学したいという思いがあったそうだ。留学先は文化理解や学業の面でも魅力的、かつアイスホッケーも思いっきりプレーできるフィンランドを選んだ。

高校在学中にアイスホッケーのクラブチームのトライアウトに合格したため、現地での進学を決断し、Laurea University of Applied Sciences(ラウレア応用科学大学)に進学した。現在、大学3年生で今年12月には卒業を控えているが、その後はフィンランド内の大学院に進学するつもりだという。