なんとIoT化も進行中! 最新「薪ストーブ」進化論

ローテクの塊はなぜハイテク化するのか
三島 勇 プロフィール

「白衣を着た研究者」がつくる

1960~70年代の高度経済成長期に北関東の田舎で育った私は、薄い板と漆喰壁、薄っぺらなガラスが入った窓の家で暮らしていた。

冬、すきま風が入ってくるのは当たり前で、分厚い布団をかぶって湯たんぽで足を暖めていた。厳寒期には水道管が破裂し、窓が凍って開かないこともあった。家の暖房器具は、火鉢と練炭の掘りゴタツ(のちに電気ゴタツ)、灯油ストーブという顔ぶれだった。

小学校では、「だるまストーブ」に石炭をくべて焚いていた。その日の当番が毎日、バケツをもって石炭置き場に取りに行っていたが、このストーブは石炭が赤々と燃えるまではなかなか暖まらない。しかも、当時の教室も家と同様に断熱材がなく、窓も一枚ガラスだ。ストーブに近い席の生徒は暖かそうにしていたが、離れて座る他の多くの生徒は暖かさの恩恵を受けられなかった。

【写真】だるまストーブ石炭をくべて焚く「だるまストーブ」。現役のストーブ列車で有名な津軽鉄道のもの photo by gettyimages

振り返ってみると、当時の私たちは暖を取るとき、「当たる」という言葉を使っていた。大人が「さあ、火に当たろう」といって、焚き火だけでなく、石油ストーブやだるまストーブ、あるいは火鉢に手をかざしていたことを覚えている。

一方、欧米などの緯度の比較的高い地域では、建物の1ヵ所に熱源装置を設けて、建物全体を暖房し(セントラルヒーティング方式)、熱源の一つとして薪ストーブも併用されていた。薪ストーブは、炉内で薪を燃やして赤外線を出し、室内の空気や壁、床などを暖めることで、家全体を暖房する。だから、手をかざして「当たる」器具ではなかった。

北海道を除く日本では、欧米における「セントラルヒーティング」という生活様式は定着しなかった。「火に当たる」文化の日本と違い、欧米では室内全体を暖める薪ストーブに改良が重ねられていた。薪ストーブは、過去には作業服を着た職人が工夫をして造っていたが、現代は白衣を着た研究者が開発しているといわれているほどだ。

どういうことか。

IoT化した薪ストーブ

現代の薪ストーブは、科学的なデータに基づいて炉内構造を変え、空気を整流し、薪のエネルギーをムダなく活用している。

燃焼については次回に詳述するが、燃焼の"革命"が起こり、燃焼効率が90%にも及ぶものが出てくるなど、旧式のストーブと比べ、格段に向上している。少ない薪で暖かくできるのだ。浮遊粉塵の排出もかなり抑制されるようになっている。

機能向上だけでなく、デザインも洗練され、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)も導入されている。ダイソンの掃除機を例に考えると、イメージしやすいかもしれない。

たとえばデザイン面では、ガラス窓が大きくなり、曲面を多用して、モダンな家とマッチする家具のようなものもあれば、絵を掛けるように壁に組み込むことができるタイプもある。また、無骨ではあるが犬の形をしたようなもの、彫刻家がデザインしたオブジェのようなもの、クラシカルな形状をした製品など、消費者の選択肢は拡大している。

IoTでは、薪ストーブ炉内の酸素濃度と温度をセンサーで計測し、最適な空気量を自動で調整し、薪を完全燃焼させられるようになった。着火すれば、あとはリモコンで設定した温度を保ち、薪の補給をアラームで知らせる。

スマートフォンで温度を設定したりアラームを受けたりすることも可能になった。手間が省け、薪の消費量や排煙量も抑えられるようになってきた。北欧ではさらに、薪を自動で供給するストーブが研究されている。

ローテクの塊だった薪ストーブはいま、ローテク部を磨き上げるとともに、デザインが洗練されるなどの改良が重ねられたうえ、ITを活用した"進化"が加速している。

【写真】現代的な薪ストーブ現代的なデザインの薪ストーブ。アメリカのハウスメーカーが設置したもの photo by gettyimages

3年前に購入した我が家の黒衣の薪ストーブと比べても、その改良スピードは驚くほどだ。現代生活に受け入れられやすいようなイノベーションが、薪ストーブに起きているといっても過言ではない。次回は、そういった面についても紹介することにしよう。

(次回は4月13日配信の予定です)

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/