保守が大きく揺らいでいる…神社本庁「全面敗訴」の深層

「グレーな人々」の強権支配は続くのか
伊藤 博敏 プロフィール

「主張が全面的に認められた判決でした。それに対して(神社)本庁側は控訴してきましたが、負ける要素はなく、最後まで徹底的に戦うつもりです。それが、(神社本庁を)正常化に導くものと信じています」

桜の花が満開の靖国神社境内で、神社本庁を訴え、勝訴した稲貴夫元総合研究部長は、こう語った。

稲貴夫元総合研究部長
 

全国8万の神社、2万の神職を傘下に治める神社本庁が揺れている。

東京・深川の富岡八幡宮、四国・香川の金刀比羅宮など有力神社の離脱が相次ぎ、九州・八幡総本宮の宇佐神社では、宮司の罷免を求めて市民が署名活動を行なうなど前代未聞の事態が発生している。単立ながら神社本庁が人事面で影響力を行使することもある靖国神社では、「天皇陛下(現上皇)に対する不敬発言」で宮司が辞任した。

その混乱の象徴が、3月18日、東京地裁で言い渡された神社本庁全面敗訴の判決だろう。

人事をテコにした強権支配の実態

訴訟そのものは、17年8月、神社本庁が所有する資産売却を巡り、不正があったとする内部告発を行なった稲氏を懲戒解雇、稲氏に協力した瀬尾芳也元教化広報部長を降格した処分に対し、同年10月、2人が不当解雇だと訴えたもの。つまり地位確認を求める訴訟であり、不正を正すものではない。

だが、その元となる資産売却は、15年10月に行なわれたもので、川崎市の百合丘宿舎を競争入札ではなく随意契約でディンプル・インターナショナルという出入り業者に1億8400万円で売却。即日転売した同社は約3000万円を労せずして得たが、さらに転売が繰り返されて半年後に3億500万円に跳ね上がった。

 

安値売却の背後に、ディンプル社と田中恆清・神社本庁総長、打田文博・神道政治連盟会長との特別な関係があったのではないか。そう綴った文書を作成した稲氏を「組織の秩序を乱した」として懲戒処分したのだが、判決は、売却価格が低額で承認過程に不審な点があり、ディンプル社とその関連会社が過去の取引でも利益を得ていることから、「(田中総長と打田会長が)背任行為を行なったと信じるに足りる相当な理由があった」と、踏み込んだ。

裁判所が認定した「限りなく黒に近いグレーな取引」だが、問題は疑惑の取引もさることながら、内部告発に解雇で応じる一方、その取引の隠蔽に関わった幹部を有力神社の宮司に就けるなど、田中、打田両氏が、人事をテコに神社本庁を強権支配していることだろう。

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