まさか、捕手が素手でキャッチ…
プロ野球における代表的な珍プレーといえば、1981年の“宇野ヘディング事件”が思い起こされる。8月26日、後楽園球場での巨人戦で、中日のショートを守っていた宇野勝が山本功児のショートフライをおでこにあててしまったのだ。ボールはレフト後方にまで転がり、1点を失った。これにより先発の星野仙一は完封勝利を逃す。怒り狂った星野がグラブを叩き付ける姿は、今でも語り草だ。

こういう言い方もなんだが、笑えるプレーはまだいい。しかし、笑うに笑えない珍プレーもある。
1990年9月20日、東京ドームでの日本ハム対オリックス戦で事件は起きた。オリックスのサウスポー星野伸之が投じた外角高めのカーブを、あろうことかキャッチャーの中嶋聡(現監督)がミットではなく素手でキャッチしてしまったのだ。星野にすれば顔から火が出るような思いだったに違いない。たまりかねた星野はベンチで中嶋にこう言った。
「おい、素手だけはやめてくれよ」
「いや、意外に素手で捕れそうだったので……」
そうでなくても星野にはコンプレックスがあった。バックスクリーンに映し出されるスピード表示だ。
「だって僕の場合、どんなに真剣に投げても120キロちょっと。高校野球のピッチャーより遅いんです。あの頃の僕は相手と戦う前にスピードガンと戦っていましたから……」